鯉の滝登り

好きなものを、好きなように、好きなだけ。

最近観た映画4作(2019年9月)

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9月に入ってぼちぼち夏休みを取り、気になっていた映画を観ました。今月は邦画4作。

ド素人なので映画ファン的な深い考察は何一つ書けないですが、忘れないうちに感想を残しておこうと思います。あらすじは転記してないのでホームページをチェックしてくださいね。

※すべての感想にネタバレを含みますのでご注意ください。

※「記憶にございません!」は感想を書く手が止まらないので別記事にします。

 

 

 

 

 

人間失格 太宰治と3人の女たち

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脚本:早船歌江子  監督:蜷川実花  主演:小栗旬

太宰治の映画ではなく色男・小栗旬のイメージビデオ

Diner ダイナーに引き続き蜷川実花監督作品。かの有名な太宰治と彼を取り巻く3人の女性の物語。

太宰ファンの方々、気持ちはわかる。わたしも小説のダイナーファンなので、ただの恋愛物語にされてかなり複雑な気持ちであった。筆者はそこまで太宰に明るくないのだが、小栗旬が女遊びする物語」だと思って観ればストレスフリー。ちょっと太宰っぽい格好してるけどあれは小栗旬。よし。

 

公開前から「死ぬほどの恋。ヤバすぎる実話。」というキャッチコピーのダサさに盛り上がっていて、「こんなコピー付けられたらまた太宰治が入水する」とまで言われていてちょっと笑ってしまった。筆者はそこまで気にならなかったけど、小栗旬が浮気する度に「死ぬほどの恋、する?」って言うのが絶妙にダサくて面白かった。それでもなんだかんだかっこいいからずるいんだよなあ。

そう、俳優をかっこよく、エロく、強く、美しく撮れるのは蜷川実花監督の得意とするところであり、その点では彼女の演出は好き。実花監督と好きな俳優が被っているからかもしれないけれど、彼女の作品は今のところすべて観ている。

ただやっぱり映画監督としての蜷川実花を自分の中で良くも悪くも評価しきれない感覚は否めない。同じ映像クリエイターでもMV監督は上手なんだよなあ...オリジナルストーリーの映画も観てみたい。

 

 

✿3人の女たち

女優陣のキャスティングはお見事。

妻・美知子役は宮沢りえ。旦那の女癖・酒癖の悪さを理解しつつ、子供たちを守るために太宰を突き放す。冷たさや苦しさから垣間見える愛情を丁寧に表現していた。

1人目の愛人・静子を演じたのは沢尻エリカ。圧倒的な美しさを持つ彼女はピンクが良く似合う。静岡に呼び出し、太宰の子を産み、認知させる。女としても母としても聡明な静子の力強さに爽快感があった。

最後の愛人・富榮は二階堂ふみ。身体も心も太宰なしでは生きられなくなってしまったメンヘラへの豹変ぶりが恐ろしい。おっぱい丸出しの濡れ場三昧でかなり体当たりな演技だが、ワンピース着たままパンツだけ脱いですぐ跨った所が一番エロかった。

結局太宰に執着していたのは富榮だけだったように感じる。一番可哀想なのも富榮かもしれない。結局彼女は太宰の子を産めず、晩年介護して一緒に死ぬことしか出来なかった。本人もその時は幸せだったかもしれないけれど、ずっと満たされない何かがあったんじゃないかな。

美知子と静子も太宰との別れ際には苦しんだが、むしろ離れてからの方がすっきり明るく生活していて怖くもあった。

優柔不断な色男は地雷。

 

 

藤原竜也贔屓がすごい

坂口安吾役の藤原竜也、完全に藤原竜也。そのうち「よ"う"こ"そ"!底"辺"の"生"活"へ"!」って言い出すんじゃないかとワクワクしてた。開口一番藤原竜也

物語の核となる人物ではないし出番も多いとは言えない。それこそ小栗旬が演じた「Diner ダイナー」のムシキングことマテバのような立ち位置。主役級俳優の無駄遣いが許されるのは俳優と監督の間に信頼関係があってこそだと思う。

あのバーのママ役、実花監督がやる必要あったのかな?そして露骨な藤原竜也贔屓がすごい。ファンとしては嬉しい限りだけれど。

 

 

✿史実に基づいたストーリー展開

書き出しと随分矛盾したことを書くけれど、実花監督にしては一般的に言われている太宰をそこそこ忠実になぞっているような気がした。太宰の長男がダウン症であったことを踏まえ、実際にダウン症の男の子を起用していたのが印象的。青のインクをこぼすシーンがとても良かったし、あれはあの子たちと宮沢りえが演じてこそ生まれた感動や苦しさだと思う。

 

入水についても、直前に生への執着が芽生えたとか、富榮に殺されてから紐で結ばれて飛び込んだとか、いろんな噂が現代においてもまことしやかに囁かれているが、このあたりの描き方は淡々としていて煙に巻いたのがよかった。実花監督の演出は良くも悪くも説明的な部分があるが、小栗旬が水中で目を開けて終わるラストは観客に「想像させる」演出だったのでかなり気に入っている。

 

 

小栗旬の凄さを目の当たりにした

この映画の一番の見所は映像の美しさでも出演俳優の豪華さでもなく、小栗旬の演技である。かつてのニナミカ作品はアートに押される部分が多く、今回も彩り豊かではあるが、それ以上に役者の個性にも強くフィーチャーしている気がする。

彼の口の動きに注目してほしい。祭りの中富榮と求め合う姿を家族に見られてしまい、慌てて追いかけ見失った後の口の動き。酒場で三島由紀夫(高良健吾)に物申されたときの口の動き。改めて彼の役者魂に完敗でした。あれ見た時ちょっと身震いしたもんね。

 

 

主題歌は東京スカパラダイスオーケストラの"カナリヤ鳴く空 feat.チバユウスケ"。チバさん大好きなので嬉しいしめちゃ良い曲。

 

 

 

引っ越し大名!

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原作・脚本:土橋章宏  監督:犬山童心  主演:星野源

✐設定と物語の良さが光る時代劇コメディ

生涯に7回もの国替えをさせられ"引っ越し大名"の渾名が付けられた大名・松平直矩をモチーフにした小説「引っ越し大名三千里」の映画化。

国替え=お引越しにフィーチャーした新しい時代劇コメディだが、笑いあり涙ありで満足感高い。

 

星野源高畑充希のタッグ、とても好きなので嬉しい。出演者もかなり豪華で見応えあり。ちなみに別記事で扱う「記憶にございません!」にも登場したずん・飯尾や次紹介する「王様になれ」の主役を務めた岡山天音も出演している。

 

 

✐武士モノに一石投じる文化系童貞

星野源、童貞を演じるのがあまりに上手すぎて(そもそも童貞役が多かったけど)今後も童貞役ばかりオファーが来るのでは、というくらいオドオドした書庫番・春之介にピッタリのキャスティング。時代劇は戦いがメインになることがほとんどだけど、この物語の主人公は文化系。頭を使って無茶な国替えをこなしていく。やっぱり得た知は裏切らないんだな。

共演者との掛け合いも面白かった。たまに出てくる星野源的なツッコミもこれまた良い。キャラクターはいじめられっ子風なのに、ああいうときだけシュールな一面が顔を出す。

 

 

✐春之介の幼馴染・鷹村がかっこよすぎる

そんな春之介を手助けする幼馴染・鷹村の殺陣が素晴らしい。コメディの中に一際かっこいいアクションシーンが目立つ。特にこの鷹村という役は酒好き女好きでちゃらんぽらんなようだから、それで強いとなると熟女のみならず色めき立つのは頷ける。

国替えの道中、何者かに襲われる松平一行。鷹村はニヤニヤしながら3mもあろうかという松平伝統の御手杵の槍を振り回す。笑いながら次々と敵を倒していく。ちょっとサイコパスだけど強すぎて惚れる。

武士モノならメインになるはずの殺陣シーンを鷹村がほとんど担っていたのがこの映画の新鮮なところであり、コメディらしさを失わないための工夫であったように思う。血も出ず誰かが誤って刺される展開もなく、黒幕もあっさり顔を出す。今回のメインは「お引っ越し」だから、ゴチャゴチャしなくて良かった。

春之介が頭を、鷹村が身体を。2人はいいコンビだ。

 

 

✐綺麗事では済まさない経費削減の過程

お金が足りない中なんとか引っ越し費用を工面しなければと奮闘する中で、お金を借りたり家具を売らせたり人員を削ったりと「犠牲になった面」までしっかり描いていたのが現実的で、物語が深まっていたように思う。引っ越しなら道中にフィーチャーして戦いモノにすることもできるが、このストーリーは準備にその多くの時間が割かれている所が新しい。

特に数十人の武士に対して「百姓になってくれ」と頼むシーンはなかなか胸が痛かった。実質クビ。だが引っ越しを繰り返した後、忘れたっていいはずの彼らを春之介はちゃんと自分の足で迎えに行った。これはかなり胸アツ。

それでも15年という長い月日のうちに死んでいった者もいた。彼らの名前を石碑に刻んで「全員揃った」と呟くところは、言葉に出来ない積み重なった思いを感じた。

 

 

 

王様になれ

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脚本:山中さわお  監督:オクイシュージ  主演:岡山天音

♚the pillows30周年記念のオリジナルストーリー

the pillows30周年企画の一環として作成された映画。フロントマンの山中さわおが脚本を担当し、その映像化を俳優のオクイシュージに頼んだことで完成した作品である。

ドキュメンタリーではなくオリジナルストーリーになったことで、ピロウズのファンでなくても楽しめる作品になっていた。もちろん曲のくだりや最後にヒロインのユカリが放つ「久しぶりじゃないか」というセリフなど、バスターズにしか通じない部分もあるけれど。

 

ピロウズをモチーフにした映画、というよりも、ピロウズをストーリーに落とし込むとこうなる、と言った方が正しいかもしれない。ピロウズというバンドがそのまま映画になったような...

カメラマンを志す祐介の藻掻く様には多くの共感が得られるはずだが、この「主人公を自分に置き換えられる」という感覚はピロウズの楽曲に対して我々が感じてきたまんまなのである。あのバンドのファンはそうやってあのバンドに助けられてきた。

 

 

♚怒ってくれる人がいるということ

祐介を演じた岡山天音、もどかしさの表現が素晴らしい。彼が主役で良かった。

さわおさんに怒られるシーンはあまりにリアルで観ているこちらもヒヤヒヤしたけど笑、あのふてくされた表情や素直に謝れないことが彼の人生のむしゃくしゃした感じを表しているようで刺さった。

岡田義徳は流石だったな。ピロウズのファンということで更に株だだ上がり。祐介の年齢であそこまで真剣に怒ってくれる人って貴重だよね。大人になるとどんどん怒られるのが下手になっていくし、家族以外で真剣に自分に向き合ってくれる人なんていないに等しい。

プライドだけ一丁前でなかなか大成しない祐介に、ぶっきらぼうながらも真摯に寄り添ってくれる兄貴を好演。

 

 

♚豪華アーティストとライブシーン

ピロウズはもちろんのこと、親交の深いアーティストたちも本人役として出演している。

いろいろすっ飛ばして1つ言わせて欲しい。OJをどこにやった!テナーがピロウズに出会ったのは3人時代だったっけ...なんとも言えない気持ちになったので彼はローソンでバイト中、ということにしておく。

話を戻す。みんな音楽を生業にしたミュージシャンなのに演技上手いね!田淵さんもいろいろ言ってたけど様になってた。やっぱりステージに立ち慣れてる人は違うのかなー。

何よりも山中さわおの華やかさよ。映画中さわおさんのアップでライブシーンが始まったとき、何度も見た光景のはずなのに鳥肌がなかなか収まらなかった。やっぱりあの人ロックヒーローだわ。

 

 

♚「王様になれ」に込められたメッセージ

ピロウズの楽曲"王様になれ"で好きなフレーズがある。

《脳細胞の支配下で王様になれ》

王様というのは権力やエゴの象徴として用いられることが多いけれど、そういう欲の部分を自分でコントロールしながら「やりたいことをやれ」「なりたい自分になれ」と呼びかけられているような気がしてならない。

現実的には祐介のように夢に向かって突き進んで望んだ仕事を貰えるのはほんのひと握りの人間しかいないってこともわかった上でのメッセージである。とにかく楽曲を聴いてほしい。

 

劇場で何よりも頷いてしまったのは、ユカリが放ったピロウズ話せる人、周りにいないから」というフレーズ。いないんだよ。でもそれがいい。

 

 

 

任俠学園

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原作:今野敏  脚本:酒井雅秋  監督:木村ひさし  主演:西島秀俊西田敏行

‪✂︎‬義理人情に溢れた世直しヤクザコメディ

「任侠」シリーズがついに映画化。

真面目だけど不器用な弱小ヤクザ「阿岐本組」が町の立て直しに奮闘するストーリー。

原作では組員がやっかいな案件を持ってきて組長が取り仕切りながら事業を再建していく流れだったと思うけど、映画では永神組長(中尾彬)がなんでも引き受けてしまう阿岐本組長(西田敏行)に相談を持ちかけ、日村(西島秀俊)らが解決へと奮闘する展開。

コメディなんだけどアクションシーンもしっかりかっこよくて、友情あり礼儀あり、笑いあり涙あり。設定の面白さもさることながらストーリー構築に奥行きがあってとても良かった。出演している役者陣も豪華。

 

 

✂︎個性がぶつかり合う阿岐本組メンバー

西島秀俊演じる日村誠司というキャラクターがイケメンすぎて惚れる。もちろん西島秀俊がかっこいいからというのもあるけど、真面目で断れない性格だから途中で投げないし筋は通す、そして喧嘩が強いときた。なによりあの上半身見ておじさんとは言えない。お背中最高。

すっかり定着した西島秀俊伊藤淳史のコンビの掛け合いも本当の兄弟のようでにやにやしちゃう。伊藤淳史は無茶ぶりされつつも忠誠心の強いワンコキャラが本当によく似合う。

池田鉄洋はもう存在がコメディ。彼なくしてはこの映画のシュールな面白さは生み出せていないはず。「どうぞー!」のくだり、声出して笑った。

金髪誰だ?と思ったら佐野和真。カメラ小僧と友達になったり、パンダのゴムつけてたり、チャラそうだけど優しい。彼の演技をあまり見た事がなかったのだけど、これはきっと俳優人生の中でも代表作になるんだろうな、という予感。

前田航基は頭脳派の弟分を演じた。最初まえだまえだのお兄ちゃんだと気付かなかった。ヤクザが社会の受け皿となっていることを表すようなキャラクター。愛らしさもあって応援したくなる。

そして三谷組常連・西田敏行の面白さと道徳的な演技は唯一無二だなと改めて。西田敏行がやる役は全部西田敏行に染まるなあ。あのお節介ジジイ感、嫌いじゃない。

阿岐本組三ヶ条(カタギには手を出さない、正々堂々と勝負する、出された物は残さず食べる)は絶対守るけど、喧嘩させるとめちゃくちゃ強い。弱小ヤクザだけど義理人情にあつく、世のため人のために信念を貫く。どうぞ皆さんギャップにやられてください。

 

 

‪✂︎‬高校に関わる人々

ツンデレヤンキーに葵わかなをキャスティングしたところがこの映画にとって大きな成功の1つだったと思う。誠司からの「ありがとな」に動揺するマイルドヤンキー、可愛いがすぎる。

桜井日奈子を優等生ぶったワルにしたのもこれまた良い。彼女は清純派よりもぶりっこな悪役に向いてそう。時代が違えば花男の桜子とかやってそうだもんなあ。

ヤンキーと張り合える校長といえば生瀬勝久。ノーモアクライ。安定すぎて特にコメント無し。光石研や白竜、佐藤蛾次郎といった名俳優が脇を固めているのもすごい。

 

 

‪✂︎‬NGシーンを盛り上げるスカパラ

スタッフロールと共にNG集流してくれるのとっても良かった。コメディならやっぱりNGカットが見たい。

西田敏行カバーの"また逢う日まで"が流れた後にかかる東京スカパラダイスオーケストラの"ツギハギカラフル"がこれまた良い。スカパラはハズレがない。

 

期待以上の面白さだったので絶対続編作って欲しい。次回の舞台は温泉宿ですか?とっても楽しみ。期待してます。

 

 

 

 

 

以上、感想でした。今月はとりあえず「ジョーカー」「イエスタデイ」観たいな。あとは未定。

「記憶にございません!」の感想も書き進めてます。後日アップしますのでそちらもぜひ。

 

 

 

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