鯉の滝登り

好きなものを、好きなように、好きなだけ。

佐々木亮介のパねえ 第1回「俺とPatrick Vegee - UNISON SQUARE GARDEN」

 

意外と喋る男、意外と喋るロックンローラー

 

a flood of circle/THE KEBABSの佐々木亮介さんが今「旬なもの」について語るpodcast佐々木亮介のパねえ」が先日スタートしました。

 

筆者も一応帰国子女で佐々木さんの生い立ち等に共通項がいくつかあり、大変烏滸がましいですが以前からとても親近感を覚えるミュージシャンなのです。育ったカルチャーの中に重なる部分が多少はあるのかなとも感じています。

 

そんな佐々木さんがあらゆるものについて掘り下げるpodcast、第1回は9/30にリリースされたUNISON SQUARE GARDEN8枚目のアルバム「Patrick Vegee」について。ミュージシャン目線でのレビューは非常に興味深いものでとてもわくわくしたので、気になったところをピックアップして感想を書き連ねていきたいと思います。

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※ここからネタバレを含むのでまだ聴いていない方は回避お願いします!

「佐々木亮介のパねえ」はこちらをクリック(Spotifyに飛びます)

 

 

 

 

ルーツ

throwcurveにピンと来い」

「いくら"RUNNERS HIGH REPRISE"で味をしめたからって、アルバムの大事な所に置く楽曲でこんな堂々とinspired by throwcurveって表明する必要ある?」というのがこの曲を、更にはこのアルバムを紐解く鍵の一つになるんでしょうね。

the pillowsUNISON SQUARE GARDEN以上に長いこと愛しているバンドなので元ネタにニヤニヤ出来たけど、正直throwcurveはもっと聴き込む必要があるかも。父に聞いたら家に「リコール」あったのでちゃんと聴いてみようと思います。新たな発見がありそう。

 

 

浮かんでこない「接続詞」

楽曲の元ネタと思われる作品に触れたことがない、という事実に対して「しっくり来ない、わかってない」と正直に話す佐々木さん、めちゃくちゃいいなと思いました。自分なりの解釈もありつつ、真髄には辿り着けないなという前向きな諦念。彼は「アニメ的なカルチャー、ボカロ的なシーン」もわからないと語っていましたが、筆者もこれは同じです。

もちろんUNISON SQUARE GARDENはロックバンドだけが好きな人にも「それでいいよ」という姿勢を示してくれてはいるのですが、アニソンに明るくない自分に心が暗くなることもあるのもまた事実です。それで彼らを嫌いになるなんてことはないし、こちら側の申し訳なさが募るだけなのですが。

だからこそ、そういったルーツと「シンプルなバンドへのルール、ロックバンドへのルーズな憧れ」がパラドックスになっているのかも、もはや接続詞的な要素はあんまないんだと思う、と語る佐々木さんの視点が救いでした。筆者はロック側からしか掘れない人間ですが、それでいいんだと改めて思うことが出来て良かったです。

 

ルーツのルーツ

ニルヴァーナスタイルを真っ当に入れようという気はあまりないのでは、という話。これは理解しているか否かという問題ではなく、例えばピロウズハイロウズ、スロウカーヴのように田淵さんが憧れてきたバンドたちのルーツを間接的に、かつ感覚的に拾い上げているのではないのかなー、と少し思いました。

 

 

タイトル

「"マーメイドスキャンダラス"じゃなくて"スキャンダラスマーメイド"だろ」

全く同じことを思いました。でも田淵さんの頭の中では敢えても何もこの語順しかなかったんだろうなとも思うのですがどうなんでしょうね。というのも、田淵さんって楽曲制作においてはあまり英語の正しさを気にしない人なんだなと最近斎藤さんのインタビューでの発言を読んでいて感じるからです。"fake town baby"の冒頭の母音のはめ方とか、"世界はファンシー"のguitarのイントネーションとメロディの問題とか。英語を使うにも日本語的で(貶してない)、それが彼の書く曲の魅力でもあるのですが。

 

漢字+カタカナ問題

"摂食ビジランテ"について言及した際の「漢字+カタカナ問題」。"夏影テールライト"もそうですね。佐々木さんはこういったタイトルの付け方はやらないそうですが、"君繋ファイブエム"、"無罪モラトリアム"、"高気圧ガール"、"中央フリーウェイ"等、楽曲タイトルにおける漢字+カタカナの組み合わせはいつ発明されたのかというお話をされていました。

筆者も明確にはわからないですが、曲名以前の話で日本語において漢字+カタカナの組み合わせって多くないですか?"感謝デー"、"東急グループ"、"湾岸スタジオ"、"天王洲アイル"、"高輪ゲートウェイ"...語学的にこういう並べ方を好むとかあるんですかね。ちょっと調べてみようかな。

 

cody beats=code/歪

コードいびつ→コーディービーツって知ってました?筆者は今回初めて知りました...これだけ追っててもまだまだUNISON SQUARE GARDENのことわかってないな自分...

 

 

音作り

「色んなビートを乗りこなしてる」

佐々木さんのこの評価が印象的で、これは貴雄さんの力によるところが大きいのかなと素人目線では感じています。シャッフルビートが得意と言われていたけど、言われてみれば確かにそうかもという感じです。番組中のリズム取りで真っ先に思い付いたのが"10% roll, 10% romance"だったけどあれもそうなのかな。

シャッフルビートから話題はピロウズのトリビュートにも発展。佐々木さんは「真っ当にピロウズやってる」のに対して田淵さんは「歪んだピロウズ」っていうの的確すぎるなと思いました。佐々木さんはさわおさんから純粋なロックンロールの担い手として可愛がられているけれど、田淵さんはまたちょっと違って「ロックンローラーとしてど真ん中ではないけれど、超ド級ピロウズ愛と作曲センスでさわおさんまで辿り着いた」って感じ。

 

3人の音

"弥生町ロンリープラネット"のように、バラードだけど歪んだギターを入れたりドラムガンガン入れたりというロックバンド的バラードもUNISON SQUARE GARDENには結構ありますよね。おかげで音の隙間を全然感じません。

3人のバンドは対バンにおいてダイナミクスで不利と言われつつ、UNISON SQUARE GARDENが評価されている点はやはり3人だけでやっているとは到底思えないことを涼しい顔でやってのけるあの職人技でしょう。3人とも身を削ってギリギリまで担いつつ、足りないと思わせない工夫をしている。物凄いバランスで成り立っているバンドですよね。

それでいて多くのバンドが当たり前のようにやっている「バンドのサイズに合わせた音作り」とは全く逆方向に進んでいる。本当に稀有な人たちですね。

 

田淵さんのトレンド

UNISON SQUARE GARDENもa fiood of circleも参加している9mm Parabellum Bulletのトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」。ここでUNISON SQUARE GARDENがカバーしている"Vampiregirl"がマイナーキーで複雑なアレンジであることから、"マーメイドスキャンダラス"と同時期に録ったのでは?という推察はさすがミュージシャンと思いました。真偽はわからないけど、視点が鋭い。

"Catch up, latency"の間奏で斎藤さんのオクターブ奏法からキメを作りながら絡んでくるあのスタイルも"夏の砂漠"のイントロとスタイルが似ていると...田淵さんの中でその時その時のトレンドがあるのかな。

 

コーラスの発明

"夏影テールライト"のサビハモについて。このコーラスめちゃくちゃ好きなので言及してくれて嬉しかったです。ストリングスを人力で補っているようなコーラスですが、あくまで斎藤さんを立てる仕組みになっているというのは頷けました。

「こうやって発明していくのかな、この人は」と仰っていましたが、発明と引用のバランスが絶妙なのがソングライターとしての田淵さんなのかも。

 

 

ロックバンド

今のUNISON SQUARE GARDEN

序盤でジャケットについて語っていましたね。売れてたらもっと派手にしてもいいのにと唸りつつ、「田淵さんが今いかに説明する気ないか」というフレーズ、「説明する気ない」というのがネガティブな意味でないことも含めとても的確だなと思いました。

シンプルに3人で音合わせるとこうなるんだぜ、ということを説明するだけのアルバム。聴きゃわかるから黙って聴いてろ、みたいな。

UNISON SQUARE GARDENが必要以上に目立ちたがらないのは周知の事実ですが、「マジで写真ちっちゃくないすか?笑」は笑った。

 

覚悟

斎藤さんは"スカースデイル"のような楽曲を書けるし、バンド内でも自分のアレンジを出しているけれど、「UNISON SQUARE GARDENはこうなんだ」というバンドのために徹せることを「覚悟」と表現した佐々木さん。優しさではなく覚悟だと。田淵さんもそれを引き受けて、3人で輝けるところを探す。バンドの深い部分をシンプルに説明した熱いワードでした。「腹を括って自分をユニゾンにカスタマイズ」もその通りだなあと。

「バンドメンバーだからいつもべったり仲良くしてるわけじゃない、それくらいずっと一緒にいるってこと。覚悟し合った関係性がライブに出てる」というようなことも話してました。これに関してはもうこれ以上言うことなし。じゃないと泣いちゃう。

 

 

佐々木とメンバー

佐々木と斎藤

斎藤さんに対して「ジャニってる」は笑った。

「日本人の同性で1番すごいギターボーカリスト」と言ってたけど、やっぱりファンのみならず同業者からの支持が凄いなあ。

「俺がやってること斎藤さんは出来るけど、斎藤さんやってることは俺は出来ない」って結構いろんなすごいギターボーカリストが口を揃えて言うよね。素人から見ても本当に超人だなと思うけど、それは仲間も認めるところなんだなと改めて。

佐々木さんはギターっぽくて、斎藤さんはギターより高い。その声の特徴がバンドの色も左右するのでしょう。

 

佐々木と田淵

仲が良くてもハマる時とハマらない時があって、アリとナシの境目が際どいとのこと。

例えば2人が所属するTHE KEBABSの活動における「どのくらいふざけるか」「やったことないことにどこまでチャレンジするか」。先日筆者も参加させていただいた素人ブロガーのインタビューも新たな取り組みでした。

筆者はこういう質問はしなかったはずですが、「コミックバンドなんですか?」って冗談で聞こうとしてきた人たちがいたのはちょっとびっくり。流石にそういう弄り方望んでないのはわかる。

 

それなのに「グッズを買おうぜ!」の曲ってアリなの?と。これは全く同じことを思いました。グッズ紹介サムいって言ってた人が、UNISON SQUARE GARDENじゃなければそういうようなことするんだー、って。アリとナシの境界線って難しい。

物販をマーチ(merchandise)と呼ぶのはなかなか浸透しなさそう笑。

 

「わかり合えるポイントとわかり合えないポイントがあるのが嬉しい。全部わかり合える必要はない」「わかり合えないってことに気付くのは嬉しい。わかるきっかけになるから」って言ってたのがかっこいいなと思いました。彼らが組んだ当初、「いくら仲良くても音楽性合わないだろ」と思ったものですが、チューニングが合うところと合わないところを楽しむのもまた一興ということなんですね。

 

 

佐々木と鈴木

「こんだけゴチャゴチャしてると(褒めてる)大変ですよね?」って聞いたの、なかなかどストレート。ただこのゴチャゴチャがUNISON SQUARE GARDEN節というか、佐々木さんもわかっていてあえてそれを聞きたかったのでしょう。大変は大変でしょ、と。

でも貴雄さんがライブで同期なしならクリックは絶対聴かないって言い切ったのかっこよすぎるな。本当に野良ドラマーって感じ。

ドラムソロについて「スキルや美学、愛情を表現している」というようなことを言ってたけど、だからこそソロの時間を丁寧に取ることがUNISON SQUARE GARDENのライブにとって重要なんだなといつも思います。

 

 

総括

以上、佐々木亮介のパねえ第1回感想でした。

単に「Patrick Vegee」のレビューに留まることなく、UNISON SQUARE GARDENがどういうバンドなのかという所までしっかり掘る佐々木さんの視点が心地よく、70分あっという間でした。ミュージシャンのレビューって(当たり前だけど)音楽雑誌とは角度が全然違っていて興味深いので、他の人もどんどんトライしてほしい。

「ロックバンドをどう転がしていくかは永遠のテーマ」という言葉に大変心踊りました。次回も楽しみにしています。

 

これを書いている途中にa flood of circleの「2020」が届きました。早速聴こうと思います。

 

 

 

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