7/26、Mr.Childrenが37枚目のシングル「himawari」をリリースした。
今年のシングルCDは約半年前に出された「ヒカリノアトリエ」に続いて2枚目である。1年に2枚もシングルをリリースするのは約10年ぶりだと思う。これも25周年というアニバーサリーマジックなのか。
タワーレコード渋谷店。問答無用でセンターに君臨しているこの風格こそがMr.Children。
表題作"himawari"は映画「君の膵臓をたべたい」の主題歌として書き下ろされた。公式にネタバレを喰らった方も多いと思うのでもう悪びれもせずに書くが、現在行われているツアー「Thanksgiving 25」において披露されている。わたしも東京ドーム公演で聴いてきた。
シングルというにはあまりに贅沢な収録曲たちをさらっと紹介する。
1.himawari
このシングルを購入して、聴いて、レビューに手をつけたところでやはりタイアップ先を知らずに書くのはあまりにも無知な文章になってしまうのではないかと考え、せめてという気持ちで原作を読んだ。
住野よるの「君の膵臓をたべたい」。7/28(金)から映画も公開されている。
あらすじを書いたり本の感想をつらつらと述べたりすると話が逸れてしまうので多くは話さないが、印象に残ったのは膵臓を病に侵された少女・桜良の語った「生きる意味」と、最後まで名前が伏せられてきた「僕」の本名だった。
わたしの感想はいいとして、この主題歌である。
原作を読んで印象が変わったことの一つは、シングルのアートワーク。
これがCDショップにおいてはわたしたちに見えるように置いてある面。
こっちは手に取った人にしか見えない面。
《暗がりに咲いてるひまわり》というのはダイレクトに桜良ちゃんのことを思い起こすけれど、この2面はかなり考えさせられる。自分の考えをここに記すつもりはないし恐らく答えなんてないのだろうけど、本を読む前の「病気のお話だから暗く、そんな中でも凛とした女性の象徴だから向日葵なんだろうな」なんていう自分の思考に雷が落ちた。考えれば考えるほど、物語のいろんなシーンが頭に浮かぶ。
もうひとつ大きく変わった印象は、タイアップそのものについてである。
好きなアーティストがタイアップを取ったとき、「ベースとしてタイアップ相手に関する知識は入れたが、完全に寄せて書いたわけではなく自分たちの書きたいことを書いたら作品と絡み合う部分があった」みたいなスタンスが好きで、がっつりとした書き下ろしは一つの解釈を残して他はすべて不正解と言われるような気がしてあまり好きではなかった。
今回はがっつり書き下ろしで、作者の住野先生も「Cメロは主人公の心情に踏み込んでいる」なんてツイートしていて八方塞がりだなあと考えていたけれど、原作を読んでから聴いてそれは杞憂だったとわかった。
おそらくこれはMr.Childrenだからできることだけれど、大衆性を失わない完璧なタイアップを体現できている。作品に飲まれることもなく、バンドが主張しすぎることもなく、共存している。
2.メインストリートに行こう (Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ)
拍手からはじまる音源。ライブ音源である。
桜井さんのこの声色よ。歌っている表情まで、その所作まで、会場の空気感さえも伝わってくるようである。
表題曲とは雰囲気は真逆だけど、この流れで聴いていくと「病気に侵されていない桜良ちゃんと『僕』はこんな風になってたかな」なんて想像してしまう。病気が無かったら彼らはこんな未来を「選択」 していただろうか、なんてね。ちょっと考えすぎね。
ちょっと使うには気恥ずかしい《ランデブー》なんて言葉も桜井さんが使うとワクワクしてくるから不思議。
「行けるか?」「行くよ後ろ!」「来い、三重?」「もう1発!」
先日ワンマンに行ったばかりなのにまた行きたいって心が叫んでる。
3.PIANO MAN (Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ)
ライブ音源なのはわかっているんだけど完成度に鳥肌が立った。
元々この曲を収録しようと思っていたのか、いいアクトだったから収録することにしたのかはわからないけれど、後者は間違いないと思う。収録曲同士の毛色がぶつかり合わないように考えられているなあという印象。
こういうちょっと突き放してくる曲がちゃんと入ってる所がミスチルの好きな部分の1つ。
コバタケの匂いが少しだけ懐かしいな、なんて。
4.跳べ (Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ)
この曲に関して、とても個人的なエピソードを書いておこうと思う。
5月、「スガフェス!」を訪れた際のことである。当日わたしは1人で、もちろんMr.Childrenのアクトも観た。いつも通りはじめから号泣していたのだが、"跳べ"に入る前にティッシュの持ち手がなくなってしまった。
涙を止めることはできないしどうしたものかと思案していたら近くにいた20代であろう背の高い男性が黙ってティッシュを差し出してくれた。余裕のなかったわたしはそれを受け取った。その男性は少しだけわたしに近づいてミスチルのアクトを最後まで一緒に観てくれた。
終わった後すぐお礼を言ったが、あまり話す時間も持てず人に紛れて見失ってしまった。ミスチルのグッズを身につけていたこととなんとなくの顔しか覚えていないけれど、心の中で再度お礼をした。
その後月日は流れ6月、ミスチルのツアーである。わたしはお昼過ぎに物販列に向かった。
そんなに並んでないな、1時間もかからず買えそうだな、なんて思いながら最後尾に着く。
ふと横を向く。
ドラマってあるんだ。
先日のそのティッシュをくれた方だった。
彼も覚えてくださっていたようで、「あのときはどうも」なんて生々しい挨拶。
物販も終わって相手のお友達が来るまでずっとお話してた。「今度飲みましょう」という社交辞令を残して去っていった。わたしもその後すぐライブを一緒に観てくれる友達が到着してテンションが上がったからそんなこと忘れていたけど。
その後のことを書くと長くなるので割愛するが、こんなこともあるんだなあって話。
このエピソードもそうだし、元々"跳べ"は自分の中でかなり思い入れのある曲なので、このシングルに入っていて嬉しい。
5.終わりなき旅 (2017.4.23 YOKOHAMA)
ONE OK ROCKツアーの横浜アリーナ公演にゲスト出演した際の音源だそうだ。
この2017年にこの曲のライブver.が円盤になるということがすごく嬉しい。基本的に音源が好きな身ではあるが、やはり"終わりなき旅"はライブで聴いてこそ価値があると思っている。
実際に生音でこの曲を聴く時はJENのカウントから既に泣いているからライブ音源にしてくれることで少しだけ客観的に、より壮大なスケールでこの楽曲を感じることができる。
《どこかに自分を必要としてる人がいる》を当たり前のように「あなたを」と言い換えて歌うけれど、何度聴いても、そう歌うとわかっていても、胸に刺さるフレーズだ。
6.忙しい僕ら
2015年のライブハウス2マンツアーで初披露され、いつ音源化されるのかな、表題曲感はないしもしかしてお蔵入り?なんて思っていたらこのタイミングでのリリースとなった。世武裕子さんのアレンジがより楽曲を美しくさせている。
わたしたちはこのまま同じでなんていられないし、同じ瞬間はずっとは続かない。永遠なんて存在しないし、何をしていても時は進んでいく。
スケジュール的な忙しさももちろんだが、心も忙しい。忙しく動かなきゃいけない。そんな毎日をどう過ごしていこうか。
生きている限り、わたしたちはずっと忙しい。
7. no sound track
あれ?このシングルCDって6tracksよね?なんで7あるの?
8.ファスナー(w/スガシカオ)
こういうサプライズは良くない。
嘘、嬉しすぎて言葉にならなかった。
桜井「さあ、お招きします。僕のえー、多大なる影響を与えてくれたリスペクトするソングライター、スガシカオ!」
一言一句、しっかりと覚えている。
「スガフェス! 」が開催されると決まった時、間違いなくスガさんはMr.Childrenを呼ぶと思っていたし、4人も彼に呼ばれると思っていただろうし、出たらコラボだってするって、わかっていたはずなのに。
"ファスナー"。選曲一つでやられる。桜井和寿の作ったメロディとワードをスガシカオが紡いでいく。感慨深さが凄い。
このフェスの当日、わたしはまだ就活が終わっていなかったし、卒論で苦戦していたし、モヤモヤ考えていたことも多かった。ちゃんと乗り越えられるもんだなと思いながら、貴重なコラボを噛み締める。
この曲本当に好きだなあ。
桜井「スガシカオ!」
スガ 「ありがとう!...あー嬉しい!ミスチルの演奏で歌ったよ俺!すげー嬉しいありがとう!Mr.Childrenに大きな拍手を!」
コラボで思い出したけど、ミスチルファンなら皆さまご存知Quattro Formaggiの活動の行方も気になる。SHO"Camembert"WADA、KOJI"Parmigiano"HAYASHI、YOSHIFUMI"Cheddar"YOSHIDAの3人は元気だったけど。個人的には結構待ってます。あの付属CD本当に嬉しかったんだから。
そしてDVDについても少しだけ。
1.Documentary Of himawari
その名の通り、表題曲ができるプロセスを追ったドキュメンタリーである。
"himawari"の歌詞もメロディも最初は違ったこと。助詞ひとつで印象がまるで違うこと。
ムードメーカーJEN。
「優しさよりも荒ぶる気持ちがもっと欲しくて」とオーダーする桜井さん。
ガツガツ意見出し合う4人。
ナカケーの近くにあるスタバのタンブラー。
健ちゃんがeditを聴く凛とした姿。
桜井さんマスクと眼鏡しててもかっこいい。
「真夏に咲く向日葵だったら意味が無くて」「暗がりの部分とかを音で表現したい」という桜井さんの意志。
Mr.Childrenの音楽は、桜井さんだけでは作れないこと。
ビッグバンドだからこそ、一音一音に向き合っていること。妥協は一切ない。
そんな突き詰めた先に見えたワンテイクが、わたしたちの耳に届くこと。
Mr.Childrenは常にトライするバンドだと思っている。「REFLECTION」の後の規模の小さい活動にいろいろと憶測が囁かれていたが、わたしは全くそのようなことは思わなかった。
彼らがもう大きな活動をしないなんて想像ができなかったし、事実Mr.Childrenというバンドはホールツアーから「演奏の繊細さ」を手に入れてまた大きい所に戻ってきた。
当たり前だ、彼らはPOPSAURUSであることを自覚しながら音楽と遊んでいるんだから。
2.君がいた夏 (25th Anniversary Day -2017.5.10 NAGOYA-)
件の中止された公演の振り替え日であり、Mr.Childrenの記念日であり、特別な日の、特別なテイク。
Gジャンがこんなに似合う男性をわたしは他に知らない。異論は認める。
この曲が発売されたときまだ生まれてない。わたしの人生より長く走り続けてきたモンスターバンドを、これからも追いかけて行きたいと思った。
ラストの4ショットがグッとくる。
そしてDVDのディスクには仕掛けが施されている。何がと書くつもりはない。発見した時の愛おしさはこの上ないものだった。
Mr.Childrenを最近好きになった人は、まず今年出たシングル2枚を買ってみてもいいんじゃないかな、と思った。何度も言うように「シングル」という言葉で括るのも恐縮だけれど。
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