鯉の滝登り

好きなものを、好きなように、好きなだけ。

UNISON SQUARE GARDEN - Ninth Peel

※この記事ではUNISON SQUARE GARDENのアルバム「Ninth Peel」の内容について記載しています。

 

 

 

 

UNISON SQUARE GARDENのアルバム「Ninth Peel」がリリースされました。
ナインスピール、文字通り9枚目。前作「Patrick Vegee」が2020年9月末だったので、アルバムとしてはおよそ2年半ぶりですが、世の流れでツアー開始が遅れたこともありそこまで間が空いていない印象です。
彼らがどんな状況下でもライブを続けてきていたことで、いかなる時も私たちの心に空白がなかったと言うのも理由の一つだと思います。こういうことを書くと突如現れる人生訓おじさんに怒られる気しかしないですね。でも本当のことなのです。

 

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※完全生産限定版。でかい。映像諸々はこれから観ます。
  トランプは友達がいないのでとりあえず観賞用で

 

 

さて、本作は総収録時間40分13秒の11曲構成。ユニゾンのアルバムって大体12-13曲のイメージなので、11曲はファーストアルバム以来なのでは?数字だけ見ればすっきりした印象。

田淵さんの中で直近のアルバムたち、特に「MODE MOOD MODE」の評価がめちゃくちゃ高くて、あれはコンポーザー目線なのかやりきった感なのか。
勿論大好きなアルバムだけど、いちリスナーとしてはやはりこの先の道のりを知らないので手放しに「7枚目がバンド史において最高傑作です!」とは言い切れない、今の所。
当時しきりにメディアで語っていた「構築美」の追求は概ねやり切ったという感じなのかな。それに加えて、おそらく実績と経験が彼らを「整えなくても形になる」というフェーズに押し上げているのだろうと思います。

 

 

前置きはこのくらいにして、1曲ずつ感想を。そう言えば毎作恒例となりつつあった○枚目コール、実はまだ見つけられていません。アルバムタイトルで完結しているのかな?こんなにストレートなタイトルもこのバンドには珍しいですよね。もし見つけた方いらっしゃったらこっそりヒントください。

 

 

 

01.スペースシャトル・ララバイ

1曲目にトンチキ加速ソングか来ると勝手に思っていたら、色んな前情報を見て今回は様相が違うぞ?と。蓋開けてみてまず、イントロ無しで始まることに驚いた。
もし筆者が置くなら2曲目だな、なんて思いつつアルバムを聴き進め、M11→M1に回帰した所で全部腑に落ちた。この件はM11にて詳しく書くけれど、この曲はM1でありM12でもあるんだなと解釈している。

 

ストレートなロックでありつつ、《大切に淹れたコーヒーとか飲みながら》の転調のような遊び心も忘れない。間奏は御三方がライブで弾いている姿が容易に想像出来る。ちょっと切ないながらも我々に決断のきっかけを与えてくれる曲。

 

 

02.恋する惑星

YouTubeでMVが先行公開されて我慢出来ずに観ちゃった。最近リリース前の情報公開多くて心乱される(なるべく手に取るまで情報入れたくないので)。

 

フィロソフィーのダンスの"ラブ・バリエーション WITH SCOOBIE DO"をUNISON SQUARE GARDENがド派手に演奏したらこうなった、みたいな感じでわくわく。
掛け声と言えばいいのかあのフレーズ、雑誌の表記を先に見ていたので何と言ってるかわかったけど(雑誌がちゃんと確認取ってる前提で)、SNS見てるとかなり表記揺れしていて、もし読んでいなければ筆者も聴き取れなかったかもしれないなと思い、興味深かった。

 

インタビュー見てると田淵さん的にはとにかくキュートな曲を、という意向だったようだけれど、所謂キュート枠でホーン有の"like coffeeのおまじない"等ともまた一線を画す。
ドラムの手数を敢えて減らしてるのだと思うが、貴雄ちゃんが刻む四つ打ちが堂々余裕のある隙間をもたらしていて新鮮。特にサビ前のリズムがお気に入り。

 

《まだまだ光っていたいのだ!》っていう終わり方珍しいなというか、多分田淵さんの手癖なら《いたいのです》の方が耳慣れた音に聴こえるんですよね…

《だって小粋でいたいのだ》、ってね

 

 

03.ミレニアムハッピー・チェーンソーエッヂ

曲名が明かされた当初から「ワンワード異なるだけの本・映画があって…」とか「田淵さんチェ○ソーマンの主題歌やりたいって言ってた…」とか色んな憶測を呼んでいたけど筆者的には割とどちらでもよくて、M3がリードだと勝手に思っていたからM2に放たれてそっちか〜という気持ちの方が強かった。一聴目はつんくっぽい曲調だなと思いました。特にサビへの展開とか。

 

イントロからリフかっこいい。裏で鳴ってるのは呼気?《どうにもできないの ごめんね》の「ない」とか「めん」の引っ張りが斎藤さん独特の歌い方で耳触りが良い。

 

田淵智也の作語センスにもう何度目かわからないが平伏す。普段会社のエレベーター乗っててベーター=エレって思ったこと一度もなかったですね…。
ただこういう"フィクションフリーククライシス"みたいな何言ってんの?っていう言葉が連なる中で、落ちサビにいい歌詞が埋め込まれてるのが粋。

こんなんじゃ青春が終わっちゃう!死にたくなってしまう

だけどどうせいつか終わるから

毎日をちゃんと諦めないでくれ

Baby now! Baby now!

 

 

04.カオスが極まる

制御不能なカオスこそ箱庭の日常。カオス"を極める"じゃなくてカオス"が極まる"なのがユニゾン的だなとリリース当時から思っていた。三人寄ればカオスが極まる。

そしてこんなにUNISON SQUARE GARDENの極限みたいな楽曲が鎮座しているのに、この「どこまでやれるか」みたいな究極さにアルバムが引っ張られていないのがまた面白い。シングル切られてる楽曲であっても、入るアルバムによってどのような扱いになるかどうかは彼らの裁量とラインナップバランスによるのですね。

 

あとこれはずっと言ってるのだけれど2番の《どうにも擦り切れてきたみたいだ》の裏で鳴ってる合いの手みたいなギターがとっても好き。ただライブだとそこは拾われないので本当に残念…まあそれは仕方ないので、その代わりあのイントロ前のカオス確定演出は引き続きお願いします。

 

 

05.City peel

peelのpは小文字なんだ。アルバムタイトルは大文字なのに。そういえばモチーフTシャツは大文字になっていたな…

 

人生を時計に例えるとっていう話は有名だけど、定説に則って0時から3年ごと刻んでいくと13時は39歳ですね。《時計はそろそろ13時を指す》、今年38歳になる御三方にはぴったりのフレーズ。

 

こういうテイストの曲が出てくると課外活動の話が持ち出されると思うけれど、個人的にはUNISON SQUARE GARDENのキャリアの先に出来た曲だなと強く思う。アコースティックも解禁(?)されたし、今後様々なトライに期待。
歌詞で翻弄するタイプの田淵さんは大切なフレーズもその中に混ぜ込むことが多いと感じているけど、この曲は終始風景が具体的で解像度が物凄く高いのがユニゾンとしては新しく感じる。

 

2023.04.21追記、田淵さんにヒントを貰ったので筆者の見解ツイートを載せておきます。

 

 

06.Nihil Pip Viper(Album mix)

アルバムを手に取って初めて本曲がリミックスの上収録されていることを知った。素人でも意外と違いがわかるというか、個人的にはこちらが好み。

M5,7と雰囲気いい曲が揃っているのにこういう曲を間に挟まないと気が済まないのがもう、気が触れてて大好き。敢えて並べないというのはあるだろうけど。

 

本曲がリリースされた時の田淵さんのコメントで『「ああ、ロックバンドが普通に新曲作ったな」という気持ちでリリースできるのが嬉しい。』と仰っていて、アルバムのスタンスとしてはこれがベースにあるのでは?という感覚がある。新曲必ずしも要らない説が筆者はまだあまりよく出来ていなくて普通に要るだろと思っているが、生み出す側のことを想像すると長く活動していればコンスタントに曲を書ける人の方が珍しいはずだから、上手く言えないけど今後肩肘張らずに制作できる環境が続くといいなと願っている。さあ、かつてネタが尽きないと豪語していたベーシスト、いつまで曲を書き続けられるのか!

 

多分あの不安な世の中で新曲を受け取った時の気持ちは一生忘れることは無いだろう。

 

 

07.Numbness like a ginger

こちらもタイアップ先を追っていないため、YouTubeで先行公開されたMVはわざわざミュートして流し見していたのにVG Vol.3で先に聴いてしまったという、聴くタイミングのセンスが圧倒的にない筆者。同じタイアップでもあんな口悪さ全開みたいなところからの振り幅が凄い。

 

ジャジーな曲が同じアルバムに2つも、かなり近い位置で収録されているのが意外。切なさとか空虚な気持ちが描かれていてもその先を未来を感じるのが、ハッピーエンドを得意とするバンドの好きなところ。《またあとでね》の後ろに引きずらない歌い方も曲に合ってる。

 

世の中的には既発曲の扱いなのだろうけど、正直まだ自分の中では消化不良感があるので、もう少し聴き込みたいところ。音源を受け取った上でライブで聴けたらまた印象が変わるだろうな、という予感もある。

 

 

08.もう君に会えない

モデルなどというものは存在しないので勝手に感傷的になることはないし、誰かが亡くなった時バンドがどこにいたとか、このフレーズはあのエピソードで、みたいな当てはめ解析ツイートもしないです。
斎藤さん、「宛先がわかる」ってなんの事ですか?あとNinth Peelクイズの「存在しない」の定義教えてください。

 

まあこの議論自体存在しないんだけど、田淵さんの「みんなもっとこのバンド聴いて!」みたいなムーブがうざいとき、たまにあります。いや私も知ってるし、貴方が声高に叫ばなくても、そのバンドのプロデュースとかしなくても、自分で開拓しますし、みたいな。
この曲も貴方に言われなくても自分なりに向き合ってるわと最初思ったけど、そういう雑多で余計な感情もこの良メロバラードにだったら預けてもいいかな、なんて思いました。彼女も彼もモデルはいないので何言ってんの?って話ですが。
誰かがどこかで笑ってくれているといいね。

 

 

09.アンチ・トレンディ・クラブ

個人的なことだが、最近「イミテーション・ゲーム」を見返したばかりなので、《エニグマ》に反応してしまう。

 

リードでは無いけど本作の軸となる楽曲なんだろうな。イントロ〜Aメロのギターの色が和田唱っぽくていい。"ROCK MUSIC"みたいな。コーラスもトライセラっぽい。全体的にギターが楽しいね。

繰り返される《美しいこそがトレンディ》というフレーズ。韻踏んでいるのはわかっているけど「形容詞+こそ」の違和感とフィット感がたまらなくて、斎藤さんの母音の歌い分けの器用さと田淵さんの名ソングライターぶりを感じる。

 

UNISON SQUARE GARDENが言い続け、実際にやり続けていることが詰め込まれているので、どこかはぐれ者が多いユニゾンのファンとっては痛快で満たされる1曲だろう。もう十分篩にかけられたはずなのでバンド自体もこれ以上裾野を広げなくてもいいのでは?とも思うけど、内輪的になりすぎるのも良くないし適度な風通しは必要かもね。

 

 

10.kaleido proud fiesta


どのバージョン貼ろうか悩んだけど皆さんにファーストテイク聴いてほしいのでこちらで。

彼らの口から本曲がUNISON SQUARE GARDENを代表するようなものになったと聞けたのが嬉しかった。個人的にその一つ前は"10% roll, 10% romance"だったのであろうと信じている。突き抜ける強さがあるというのもそうだが、体感的にファンが増えたタイミングでもあるように思う。斎藤さんがよく言うアルバムがバンド史を語る上での節目というのは勿論そう思うが、要所要所のシングルが持つ力もなかなか侮れない。

 

タイアップ先に明るくないという理由で、本当の意味で自分向けじゃないと思っていたこの曲が、シングルツアーを通して一番の味方になってくれたのが不思議でたまらない。
そもそもアニメ詳しくない筆者がここまでUNISON SQUARE GARDENの音楽にどっぷり浸かれているのに、信用なさすぎでは?と自分でも思ったけれど、この作品と彼らの関係って傍から見ても特別じゃないですか。そこにただスリーピースロックバンドを好きなだけの自分が何の憂いもなく飛び込んで行けるなんて、と改めて彼らのタイアップ仕事の向き合い方やその強さを学んだ次第です。

 

 

11.フレーズボトル・バイバイ

収録ラインナップを見た時からM1"スペースシャトル・ララバイ"と語感を寄せているのだろうということは多くの人が感じたことだろうが、曲名が近いから関連があるかというとディスコグラフィーとにらめっこしても割とそうでもない。今作はララバイで始まってバイバイで終わるのかな、と思っていたら、《忘れられない今日になった!》→M1の《忘れたくても忘れない 今を繋いでいく 僕たちのスピードで》に間髪入れずに繋がる構成に脱帽した。あれ、もしかして(バイバイ→)ララバイで始まってララバイで終わるアルバムだった…?
これは彼らがライフワークと称すライブの続く日々を表しているようだし、となれば勿論我々の生活のことでもある。M11で終わる日常なんて今の所想像もつかないですね。

 

イントロが普段彼らがライブに織り込んでいるセッションぽくて、何が続くかと思えば「フレーズ・ボトル・バイバイ!」のちょっとゆるいコールなのもいい。

 

今でこそそんな物好きとか言うほど規模の小さいバンドじゃないだろうにと思うけど、やはり我々の見えない所では3人で孤軍奮闘してきたんだなと思いを馳せる。ここまで来たからこそざまあみろと堂々と言えるのだろうし、あのバンドの凄さを知っている我々はやはり自信をもっていいのだと何度も保証してもらっていますね。

 

 

 

感想

筆者、数多あるユニゾン評のなかでも以前堂島孝平さんが仰っていた「常にじゃんけんがあいこのバンド」が本当に好きなんですが、本作は顕著にそれを感じました。先日の対バンでも思ったので、多分彼らは近年あいこの新記録を出し続けているのでしょう。各々がUNISON SQUARE GARDENにおける役割をあらゆる場面で瞬時に理解して常に最適解を出し続けていることでバランスを保っているのだと思います。ある人の持っていないものは他の2人が持っていて、誰かの洞窟には誰かがライトを照らす、そんな関係が非常に愛おしい。

 

生きてたらいいことあるよとかいう無責任な助言を与えるでも、困っているなら助けてあげるよと手を差し伸べるでもなく、自分が選んだ道を自分の足で生きようぜ、という快活な後押しが本作にも一貫して込められているように思います。田淵さんがテーマを決めていないというのは、それを主題にして日々楽曲を作っている訳では無く、UNISON SQUARE GARDENのスタンスとして既にあり、今までも歌ってきたことで、今作のために特別に作られた概念では無いという意味だと捉えました。

バンドも19年、御三方も今年38歳ですから、ある種彼らが歩んできた道のりや貫いてきた姿勢が勝手に説得力になっている部分はあり、以前よりも具体性の増した歌詞になっているようにも感じます。

色んな布を次々に纏いながらも軸の部分は不可侵かつ不変。独自のスタンスを貫いてきたことを、まるで彼ら自身のキャリアが肯定しているかのようですね。

 

 

kaleido proud fiestaがそうだったように、Ninth Peelもツアーを通して楽曲たちが自分の中で熟していくのだろうと思うと今から凄く楽しみです。2クールに分かれているので、セットリストの組み方にも絶大なる期待を寄せて。

 

 

 

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