※この記事は小説「ダイナー」(平山夢明先生)、現在ヤングジャンプで連載中の漫画「ダイナー」(河合孝典先生)、ウェブで連載中の小説「ダイナーⅡ」(平山先生)、そして本作劇場版「Diner ダイナー」(蜷川実花監督)に関する一切のネタバレを避けたい方は閲覧を御遠慮ください。いつもありがとうございます。
ジャパンプレミア、公開初日、そして本日。
劇場版「Diner ダイナー」を3回観ました。
筆者は原作の大ファンで、漫画もすべて読んでます。小説と漫画でストーリーは異なりますが、それぞれ面白いのです。
原作の平山先生はこのようにコメントされてます。
まったく人生、何が起きるか油断がならない。まさか自分の小説を原作に蜷川実花さんが監督をし、藤原竜也さんが主演してくださるとは未だに信じられない。
これは同時に蜷川幸雄先生の愛娘、愛弟子による真剣勝負の舞台に本作が選ばれたことも意味しているのだ。
ヤングジャンプで連載中のコミック版もそうだが、私は「原作原理主義者」ではない。それぞれがそれぞれの舞台で最高のものを提供することが使命と考え、その為の改変は大いに望むところだ。
蜷川版『ダイナー』が、どんな心の料理を出してくれるのか、今から待ちきれずにいる。
そのため今回の実写化も気楽に観ることができました(気楽だったというだけで気になる点がなかったわけではない)。
早速感想を。
冒頭の必要性とカナコの設定
なんだかんだでカナコが雑踏の中突っ立ってる最初のシーンが1番怖かった。サラリーマンが行き交ってるんだけど、みんな一斉に仰け反ってフリーズ、その反動でまた歩き出すアレ、結構トラウマになりそう。通勤中絶対思い出す。
ティナちゃんの演技めちゃくちゃ上手かったし、わざわざカナコの設定変える必要あったのかなと思う。
まずなぜ孤独な少女にしてしまったのか。これ、普通の女の子が裏の世界に巻き込まれて可哀想みたいになってるけどそれじゃ意味が無い。ここは「殺し屋専用のダイナー」なわけですけど、客は殺し屋、シェフも殺し屋、オーナーも殺し屋、そして"ウェイトレスも殺しをしたことがある"というのがポイントなんですよね。ただの善人じゃない。
詳しくは原作を読んで欲しいのですが、小説のカナコは実娘を死なせてしまった経験があります。その罪悪感みたいなところも含めてティナちゃんなら演じられそうだったのに残念ですね。
だから冒頭の生い立ちの一人語りとか、旅行会社のくだりとかはちょっと間延び感。夢も希望もないバツイチ女性が生活費ほしさにバイトに応募するくらいがちょうどいいのに。あんな綺麗だと説得力ないか...
配役・キャスト
全体として「豪華殺し屋陣なのにあっさり消える人が多いな」という印象なんだけど、小説だと登場人物の多さに混乱していた所を上手く間引いてくれたなという感じ。消さないでほしかったキャラクターもいたけど仕方ない。少ししか出番がないのに引き受けた俳優の皆さんに敬礼。どの殺し屋ももっとストーリーに関わるような脚本にしてほしかったなというのは思うところだけどね...
ボンベロ
「俺"は"〜〜〜〜〜!こ"ぉ"こ"ぉ"の"ぉ"〜〜〜〜〜〜、王"だ"!」ってやつ、CM用だと思ってたからいきなり始まって笑ってしまった。みんな藤原竜也さんにこういうの求めすぎ。
ボンベロはなんとなくもっと体格良いイメージだったけど、それを覆す強さと色気よ。スプリンクラーから水が吹き出したときのあの長髪濡れ竜也さんが色っぽすぎて無理でした。
筆者は藤原さんが大好きでしてちょっと贔屓目で見てしまうのですが、この人日本が誇る名俳優ですよ本当に。インタビュー等を読んだ限りでは彼に求められるハードルはかなり高くて、「藤原竜也なら出来て当たり前」みたいな空気があったと。それらに折れないタフさと努力、演技力が好き。
今日観た後近くにいた女性が「『扱いづらい女だな』って夢小説っぽい」と言っていた。夢小説っぽさはわからないけど、少女漫画でいう「面白い女だな...」みたいな感じなのかな?それはわかる、ちょっとツンデレっぽいよね。実写化のボンは結構序盤から情がある感じがしたけど、藤原竜也さんだから許す。
カナコ
「ダイナー」が実写化されると発表があったとき、ティナちゃんが公式SNSに何度もいいねしちゃっててほとんどバレていたようなものだったんだけど、彼女の演技力には驚きましたね。ニナミカ監督が「ティナとなら心中できる」って言ってたのも納得。エロい服装で怯えた顔されたらたまらんですな。女視点でもドキドキしてしまいました。
ウェイトレスの衣装似合いすぎ、足綺麗すぎ、お人形すぎ、可愛すぎ、表情豊かすぎ...そりゃキスしちゃうよね、わかる。本当のところボンとカナコの関係性において一番美しいのは「直接的な愛の表現がないこと」なんだよね...だからこそ「面白かったぜ!オオバカナコ」というセリフが引き立つわけで...いや仕方ない、ティナちゃんと竜也さんなら美しいから仕方ない...
菊千代
本当にありがとうおかげさまでボンのハイパー笑顔や気まずい表情が見られました。思ったよりカナコに懐くのが早くてそれもまた愛おしい。フルCGなのにティナちゃんの怯える演技がリアルで良かったなあ。
ブタ男、カウボーイ&ディーディー
思ったよりあっさり消えてしまった3人。
ブタ男は思ったより拷問しなかったから不発感ありましたね。ビジュアルはさすがだしかっこいいなとすら思ってしまったけど、もっと容赦ない金子さんが見たかったのも否めない。
ディーディーも良かったけどマックス色っぽいサトエリが見たかったなー。あのボディをフル活用した殺し屋とかね...ただ炎眉が消されている時点でカナコ以外のそういう要素はなるべく排除した印象がありますね。マリアはヘルシーなセクシーだし。
カウボーイの意味不明さが面白すぎて最高だったけど、斎藤工さん使うなら九十九九の方が良かったのでは、と思ってしまうね...平山オタクには九十九九のファン多いはずだし、実質「ダイナーⅡ」でも主役級だし。
原作や漫画ではこの拷問・身売りのシーンは結構残酷かつ胸糞で、カウボーイの心臓食べさせられたり、女は真っ裸にされて写真撮られたり、まさに「男は殺せ、女は犯せ」の世界なんですけど、そこはさすがニナミカ監督でしたね。バイオレンスラバーズには物足りなかったかもしれないけど、多くの人が観られるという意味ではいい表現が多くて好ましいなと思いました。指定なしで皮剥げないからね。
スキン
窪田くんはずるいよー。エロいに決まってるじゃないか!女子の好きが詰まってる。説明に3000字使う自信があるからとりあえず割愛。とにかく見てくれ
これ、ちょっと前なら確実に小栗旬さんの役割だったんですよねー...と、わたしはきっとスキンに花沢類を重ねている。自分も問題を抱えているのに「困ったらいつでもおいでよ」な男。無条件に優しい男。儚げだけど事ある毎に助けてくれる男。いちいちセリフがかっこよくて無理。
物憂げな表情と完璧なスフレを食べた後の豹変の仕方が上手すぎた。漫画パターンを期待してたけどそう容易くはなかったね。
カナコがたとえスキンと逃げることを選択していたとしてもどこかのタイミングで引き金を引かれていただろうなと思うし、絶対に幸せになれないのが切ない。
マテバ
マテバさん、虫食べる設定は必要だったのか...?というか小栗さんの無駄遣いすぎる。実花監督もおっしゃってたから意図的な短さなんだろうし確かにインパクト抜群だけど、殺され方ちょっと笑ってしまったよ。あれじゃ殺してくれと言ってるようなものじゃないか...あんなに頭脳明晰な見た目でコフィをシンプルに煽るなんて。
せめてダイナーは訪れて欲しかった...ボンとの絡み見たかった...色男も真っ白でしたね(物理的な意味で)。あ、最初に浮いてた時の顔、めちゃくちゃ粗品さんでした。粗品さん、使っていいですよ(誰が殺されて池に浮いてる小栗旬さんやねん、って)
いやー、やっぱり小栗ver.のスキンもみたいな。「俺はこのスフレを味わうためだけに生きてるんだ!」ってね。脳内で再生してみまーきのっ。
キッド
本郷奏多くんに殺し屋やらせるとか最高すぎるじゃん...というか原作を読んだ段階でキッドは奏多くんにやってほしいなと思ってたんですよね。精神的に一番ヤバそうな殺し屋。
ボンに死体の処理を任されたときの嬉々とした表情ご覧になりました?ちょっと想像以上にワクワクしたお顔でゾッとしましたね...本気を感じるんですよね。演技なのかどうかわからない。
ボンの留守中にダイナーに入ってくるところが本当にゾクゾクして好きなんですけど、そのスリリングの中心に奏多くんがいたことがめちゃくちゃ最高でしたね。少し残虐なシーンだとは思いつつも、菊千代やボンのカナコに対する気持ちの変化が感じられてお気に入りなんです。
ブロ
日本人でこの役できる人は武田さん以外にいないな、というくらいハマり役だった。鍛えられたボディがこんな所で生かされるとは...!
カナコが遊ばれるシーンでも見事にチャラさを出してたし、ナチュラルなお姫様抱っこ最高だし、その後の大人しくなる感じもなんだか憎めなくて可愛い。ただあまりストーリーには関わってこないのがキャラクター的に残念なところ。結局スキンの当て馬じゃんね、ちょっと可哀想。
マリア
これが原作でいう炎眉なのかなと思ってたけどそうでもなかった。というかまんまアンナさんだった。
あれだけ強そうなら無礼図に対しても強くあれ!と思ってしまったね。威勢がいいわりにあっさり殺られてて残念。というかこの殺し屋四天王、もう少し力関係や生き残り方にバランス欲しかった。いかにもボンvs.無礼図への道のりって感じがして残念。
衣装めちゃくちゃ似合っててかっこよかったなあ...!さっきも書いたけどアンナさんはヘルシーなセクシーだからブラがっつり見えても変にやらしくないんだよね。胸の形や質感が最高だなあ、羨ましい。
無礼図
他のキャラクターと同じような登場の仕方の割には後半めちゃくちゃメイン級の無礼図。真矢さんまじでかっこよすぎて登場人物の誰よりも見惚れてしまった。
ボンとの勝負になってからはもう宝塚。真琴つばさと沙央くらまを引き連れて華麗にイッツショータイム。ヅカファンの皆さんの感想が聞きたい。素人はめちゃくちゃ感動してしまいましたよ。なんだかんだで芸能人としての真矢さんしか知らないので、彼女の宝塚感をスクリーンで拝見出来て個人的にはかなり満足。本当にかっこよかった。
コフィ
奥田瑛二さんめちゃくちゃよい。みかんにこだわりを見せてる姿がなかなか静かに狂気的でよい。ただ並びや貫禄としてはボス格なのにデルモニコ殺しがバレてから殺られるまでがスッキリしすぎてる。せっかく奥田さんなのに...
スキンがカナコに託した缶の中身であっさり認めちゃうし、何分もしないで殺されてるし。デルモニコを事故に見せかけて殺すくらいの器用さがあるのに詰めが甘いというかなんというか。もう少し他の殺し屋を揺さぶって欲しかったですね。しかしイケオジ最高。
再現されなかったキャラクターたち
炎眉やソーハ、ミコト、オヅ、九十九九...たしかに2時間におさめるにはすべての殺し屋をぶち込むというのは無理がある。残酷さも含まざるを得ないから切られたのかなあ
ただ何度も言うけど九十九九は欲しかったね...いいんだけどさ...オダギリジョーさんか斎藤工さんにやってほしかったよ...
蜷川実花の世界
目から色を浴びたような感覚。
ただ、このグロ先行の男くさいストーリーをここまで自分の世界観に落とし込めるのかと驚いた。殺されるシーンすら花びらが舞ってて綺麗...残酷さと美しさというのは似ているのかもしれませんね。
全体的に展開の早いストーリーだったからこそ静止画で見たいなという感想。監督ご本人も写真家ですし。
ということで...
パンフレット購入。ビジュアル最高。これは購入してよかった。850円です。いろんな秘話も読めて結構充実した内容。
話は少し変わるが、カナコがボンベロからの電話の内容をキッドに伝える時、「なんかしっちゃかめっちゃかみたいな名前の...」とまごつく場面があるが、これは沢尻エリカ主演の「ヘルタースケルター」を想起させているのか。シリアスなシーンながらちょっとニヤッとしてしまった。
食べ物と銃撃戦
「ダイナー」の見どころって、やっぱり「食べ物」と「殺し」この2点だと思うんですよね。
個人的には彩り豊かすぎてあまりお腹は空かなかった。スキンのスフレ(異物なし)とカナコが食べたハンバーガーは美味しそうだったな。黒いバンズはあんまり...
殺しはちょっと盛り込みすぎてたかな...銃撃戦が見どころなのにわざとらしかったというか。BGMもクラシックで拍子抜けしちゃったな。アクションは皆さんさすがでした。真矢さんをはじめとしたヅカ軍団の方々の動きがいちいち美しい。
名前は?
そもそも店の名前ってキャンティーンじゃなかったっけ。「もしもし、ダイナーです」ってどこのやねーん!とはならないのがフィクション。
ボンベロズバックも劇中では言われなかったな...せっかくカナコが料理中のボンの背中を見つめるシーンがあるのに...
chimp pissは?とも思ったけど、あれは血清のくだりがないのでナシで妥当ですね。
ラストシーンについて
ボンベロから銀のアクセサリー(原作では義眼)の中に入った口座と暗証番号を託され、カナコはそのお金でダイナーを開く。これは共通した最後のシーン。
しかしボンベロと再会するところまで書く必要があったのか、非常に疑問の残るエンディングであった。Reservedで終わっとけばいいのに。もしくは菊千代風の犬の影がチラ見えするとか、扉が開いて「いらっしゃいませ、ダイナーへようこそ」で終わるとか。
望みが叶わないことが生きる希望になってるやつだって云々とか言っておきながらあっさり満たされてるやーん。というか「ダイナーⅡ」のストーリー知ってます?まだボンベロ出てきてないんですよ!!
しかもカナコは「知りすぎた」ゆえにもっとひっそりダイナーを営まなければいけない気が。海外に飛んだってそれは同じ。「ダイナーⅡ」でも店内撮影禁止にしていたというカナコの話がありますから、それほど知られたくない、でもボンベロにはいつか見つけてほしいっていうこの感じがいいのに。
これ言うと怒られそうだけど、いい意味でも悪い意味でも邦画っぽい。
父への壮大なラブレター
「俺を見つけて育ててくれたのはデルモニコです」
これを藤原竜也に言わせる実花監督。
1年前に事故に見せかけてコフィに殺された殺し屋界隈のボスであり、ボンにあのダイナーを与えたデルモニコ。ストーリー中ではダイナーに写真が飾られているのだが、なんとデルモニコ役に父である故・蜷川幸雄氏を指名。回想シーンは井手らっきょさんが代役をしているが、写真は幸雄氏。クレジットにも木村佳乃さんの下にお名前を確認しました。
この映画、ダイナー実写化という仮面を被った娘から父に向けた壮大なラブレターなのでは。となるとそれを託された藤原竜也さん、そりゃ緊張しますよね。
主題歌
DAOKO×MIYAVI「千客万来」
あるフェスで見て以来ちょっと敬遠していたDAOKOちゃんだけど、今回もコラボが当たりましたね。声質が実花監督の世界観に合っててすごく良いと思います。DAOKO×MIYAVI、というよりDAOKO vs.MIYAVIっぽい。これ即ち蜷川幸雄vs.蜷川実花、ボンベロvs.カナコ、etc.
ストーリー終わってクレジット始まる瞬間のイントロに痺れる。MIYAVIのギターほんとかっこいい。
まとめ
筆者、下の名前がカナコなので大好きな俳優さんたちに呼び捨てにされまくって非常に嬉しかったですありがとうございました。自分以外にはどうでもいい話ですねすみません。
蜷川親子の愛情と豪華俳優陣の圧巻の演技は最高に楽しめる作品だと思います。実写化は色々批判されるのが常ですが、年齢制限もつけられず2時間のストーリーにこの物語をおさめた実花監督はじめ制作陣に拍手です。正直店内の装飾はどぎつかったけど、ディーバウォッカのボトルは綺麗だった。
もしIIをやるなら、お願いですから九十九九を出してやってください。今からでも間に合う。
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