鯉の滝登り

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Suchmos - THE ASHTRAY

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6/20、Suchmosがミニアルバム「THE ASHTRAY」をリリースした。CDだけで言えばF.C.L.S.を立ち上げてからの第1弾シングル「FIRST CHOICE LAST STANCE」以来約1年ぶり、アルバムとしては2017年に発表された「THE KIDS」の次の作品いうことになる。

 

前アルバムリリース後は初のホールツアー「YOU’VE GOT THE WORLD TOUR」と対バンツアー「The Blow Your Mind TOUR」を開催。着実に場数を踏みながらもその活動は堅実で、シーンのアイコンとなることを徹底して避けているようにも見えた。

そして今作である。

 

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それこそ「THE KIDS」は、ベストアルバム並に多くのリスナーを受け入れる幅の広さを見せていた。Suchmosという名が知れるきっかけとも言える"STAY TUNE"はもちろんのこと、キャッチーでパワーのあるナンバーが揃っていたし、ある意味表向きだったなあと今になって思う。

作品の質でいうと「THE ASHTRAY」は非常に対照的である。大衆性を獲得したはずの彼らだが、それにまったく踊らされることなく1曲1曲緻密に作っていて鳥肌が立つ。最近のライブでの雰囲気を感じ取っていた方々はなんとなく予想は出来ていただろうが、リスナーに揺さぶりをかけるような徹底したクオリティの高さを誇るサウンドが詰め込まれている。

 

 

2月に配信された"808"を頭に持ってきたことも心地の良い裏切りに最適なエッセンスになった。"STAY TUNE"に続くHonda VEZELのCM曲に起用されている作品であり、Suchmosの所謂キャッチーサイドの楽曲でもある。しかし他の収録曲たちはその後を追わない。「キャッチーな作品が書けなくなったわけではないということは最初に言っておく」というメッセージにも取れる配置にニヤニヤしてしまう。

 

"VOLT-AGE"NHKのW杯テーマ曲に起用された楽曲。昨日行われた日本×コロンビア戦のハーフタイム中に披露され、盛り上がらないだのなんだの言われていたが、その反応こそ彼らが欲しかったものなのではないか。きっと大衆ウケするような曲を書くつもりでこれを引き受けたわけではないだろうし、ここまでくると物好きのざるにかけられているような気持ちにもなる。ギターのアレンジに磨きがかかっていて重厚感が増している。

 

洋楽好きの皆さまがあれやこれやと言えそうなアレンジのミクスチャーが特徴的な"FRUITS"。ホールツアーのタイトルになっており、先に披露もされた神秘的なロックナンバー"YOU’VE GOT THE WORLD"。そのアンコールでも演奏され、孤高の鍵盤から気怠くメロウなバンドサウンドが波打っていく"ONE DAY IN AVENUE"。珍しく直球なリフレインを落とし込んだラブソング"FUNNY GOLD"。そして最後を飾る"ENDROLL"。タイアップ以外のナンバーも素晴らしいラインナップだ。

 

 

「THE ASHTRAY」というタイトルの通り、売れっ子の世界に飲み込まれそうになりながらも退屈や倦怠感をすり潰して自由へと向かっているその姿が作品に表れている。地に足がついている今の彼らが一番好きかもしれない。

 

Suchmosというバンドはいろんな力でどんな風にも売り出せたはずだ。それでも自主レーベルを立ち上げ、数多の誘惑の手には興味も未練もないとでも言うようにひたすら前進していく。

 

 

活動の方向性が確かなものになると、自然とリスナーがふるい落とされていく時期が来る。これからの彼らの活動に期待を寄せて。

 

 

 

余談だが、初回限定盤には昨年11月に開催されたTOUR FIRST CHOICE LAST STANCE at Zepp Tokyoの模様が収録されている。気になる方はぜひ。筆者の豊洲公演レポートも置いておく。おつまみ程度に。

 

 

 

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