※この記事は現在東京都・森美術館で開催されている「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」とPodcast・佐々木亮介のパねえ 第3回「俺と奈良美智 -Yoshitomo Nara」のネタバレを含みます。これから行く・聴くという方は回避お願い致します。いつもありがとうございます。
第2回飛ばして第3回。
佐々木さんごめんなさい、まだ「TENET」観てないの。「TENET」も観たいし、「魔女見習いを探して」「罪の声」「浅田家」「ドクターデスの遺産」も観たい...どう考えても時間が足りません。以前は夜明けまでバルト9に入り浸るなんてこともやってたけど、この状況じゃなかなかね...といいつつそろそろどれか観なきゃなと思います。
佐々木さんのPodcastも早いもので3回目、今回のテーマは「俺と奈良美智」。
奈良さんの描く動物や女の子の絵は多くの人に親しまれています。日本のみならず世界で評価されている、現代アートを牽引している一人です。
そんな偉大なアーティスト・奈良美智さんに関するフレッシュな話題と言えば、記事公開日現在も六本木にある森美術館で開催されている「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」ですね。先週筆者も足を運んでまいりましたので、佐々木さんのPodcastの内容も交えながら感じたことを書いていきたいと思います。
STARS展について
6人の芸術家たち
佐々木さんの推察の通り、この展示は東京オリンピックと併せて行われるはずだったのだと思います。ただそれが延期になったからと言って魅力が減るものではありません。むしろ現代美術の変遷をよりアート主体で見ることが出来るので、個人的には面白さが増した気がしています。
この展示では6人のスターを取り上げています。草間彌生、李禹煥、宮島達男、村上 隆、奈良美智、杉本博司。筆者はこのラインナップだと杉本さんだけ存じ上げなかったのですが、こういった新しい出会いも面白さの一つですね。
どのアーティストの展示も活動初期のものから最新作まで豊かなラインナップです。草間さんなら水玉、宮島さんといえばLED、奈良さんは女の子と言ったように、自分の中では一言で言える作品のイメージがありましたが、実際にはそんな単純にまとめられるものではないのだなあと感じました。スピッツやラモーンズの例を挙げ、「似たようなことの中に進化や成長、幅、美しさがある」と佐々木さん。刮目せねば。
アーティストの活動の歴史を追いつつ、何を思ってこの作品を制作したのか、佐々木さんの言葉を借りれば「勝手に文脈を見出してみる」という楽しさを味わって見るのもまた一興でしょう。
超壁面のプロフィール、「これいる?」
展示の真ん中あたりに、芸術家たちの活動の変遷や「いつ誰にどう評価されたか」といったような内容が壁一面にびっしり書き連ねられているスペースがありました。佐々木さん曰く「Wikipediaでいいじゃん」、めちゃくちゃわかります~!!!
そもそも筆者は美術館にある長い文章を読まない(読めない)ので、あれだけ書かれてもフォントくらいしか情報が入ってきませんでした。
しかもあの壁面、公式サイトからPDFダウンロードできるんですよ。最初からそれで良くない?
まあディスタンス的な意味もあり、空間作りのスペシャリストがいるはずですから、あれは必要な空間だったのだと受け取っておきます。スター達の活動史を理解するには「文章より作品を見るが易し」だとは思いますが。
美術館でアートを体験するということ
2020年は新型コロナウイルスの流行により何においても「現地に足を運ぶ」ことがかなり制限されました。今回森美術館を訪れたことで、感染防止のための様々なガイドラインに従いながらも「自分の肌で感じることの大切さ」を再確認出来たように思います。
佐々木さんが「デカいは最高の体験」と仰っていましたが、本当にその通りだと思います。今回の展示の多くは写真撮影が許可されていて(一部禁止のものもございますのでご確認願います)、お金を払わずともスマホで他人の投稿を見れば何が展示されていたかは大体わかります。それでも、間に何も挟まず自分の目で直接見ることに勝るものはないと思うのです。
目で確かめる。肌で感じる。空間に包まれる。作品を目の前にして色々なことを思う。
これからも大事にしていきたい時間です。
奈良美智について
筆者と奈良美智
筆者が奈良さんの作品を初めて見たのは日本に帰ってきていたタイミングでちょうど開催されていた「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」でした。それまで奈良さんはドイツで活動されていましたから(今考えると大変烏滸がましいのですが)筆者家族の中では 「海外に住んでいる日本人」としての親近感を持っていました。同じ例で言うと「バムとケロ」シリーズ等を手がける絵本作家・島田ゆかさんにもそんな気持ちを抱いていたなあと、勝手な仲間意識を恥じるばかりです。
ルーツを知る
筆者は好きなアーティストのルーツを掘り下げる作業がとても好きで、かなりの時間をかけて行います。もちろんその人たちのバックグラウンドや思考回路、何を考えてこの曲を作ったかということにも興味はありますが、1番は「自分と重ならない部分を知りたい」というのが大きいです。
今回のパねえでは佐々木さんがベルギーに住んでいた時のことを話していましたが、筆者もベルギーにいたことがあります。自分と重なる背景や意見と、重ならない考え方や経歴のどちらも正しく分けて受容することを大切にしています。
展示にしても楽曲にしても、自分の物差しでしか受け取ることが出来ません。それは決して悪いことでもなんでもなく当たり前なのですが、それだけだとどうしてもこぼしてしまう要素が沢山出てきてしまいます。自身を形成するものだけで吸収することも貴重であり大切ですが、自分が通ってこなかった道を知ることで(それを好く好かないは別として)新しいものの見方を手に入れることが出来るような気がしています。
奈良美智のルーツ
STARS展で一番心踊ったのが奈良さんの趣味部屋のようなコレクション展示室。
奈良さんといえば音楽に造詣が深いことでも知られていますよね。現代美術の巨匠と唯一自分が対等に(はさすがに無理ですが)語り合えそうなジャンル。
奈良さんが生粋のロッカーだからこそ彼の作品に興味を持ったというのも一つあると思います。
コレクションがずらり。よく知っているものもあればジャケットだけではわからないものまで様々。CD・レコード・置物の並べ方の意図など勝手に想像する
「自分が作ったものではなく、美しいと思っているものを見せる」「自分の世界を全部見せてくれる」佐々木さんのこの言葉に尽きると思いますし、それがファン心理として本当に嬉しいのです。
奈良さんの作品を見る前にこのコーナーがあって本当に最高だなと思いました。これらを眺めるためだけにもう一度足を運びたいくらいです。
他人のコレクションを自分の視点で見るのは、その人自身を形成する一部を覗いているかのようで興味深く、非常にわくわくします。
THE BLUE展
Podcast内で佐々木さんが言及していましたが、筆者も奈良さんのコレクションを見ていたときに「THE BLUE展」のことを思いました。
2016年にafoc10周年記念としてリリースされたベスト盤「THE BLUE」にフィーチャーし、タワーレコード渋谷店の展示スペース「Space HACHIKAI」にて開催されていた催しです。
写真探したらまだありました。もう4年前か
佐々木さんの私物レコードプレイヤーや革ジャン、ギター、HISAYO姐さんのステージ衣装など、彼らを構成する様々なものを目に出来た貴重な展示でした。ステージで見る彼らよりも素に近いものを見られた気がしてドキドキしました。
もちろん好きな人達の好きなものすべてを理解する必要はないのだけど、彼らの背景を浴びるというか、纏っているものを受容できるような、そんな空間が好きです。
奈良さんの作品
Voyage of the Moon (Resting Moon) / Voyage of the Moon
2006年に制作され、現在は金沢21世紀美術館に所蔵されているこの作品。とにかく大きさが印象的。
これも佐々木さんが言っていたことそのままなのですが、この小屋に詰まった「奈良さんの小宇宙」「箱庭感」にとてつもない美しさを感じました。不可侵領域こそその人の真髄で、他の誰もそれを壊す権利を持っていません。
立入禁止のテープ。はいらないでねこ
「奈良さんが作った世界だから立入禁止」。入れないからこその尊さ、知りたいという好奇心を掻き立てられます。色々な角度から眺めたり、小窓から中を覗いたり、まさに「アートだけじゃなく多角的は大事」であることを体感できました。
ものの見方のバリエーションもまた人に教わるものなのかもしれません。
Miss Moonlight
奈良さんの新作。
佐々木さんはこの作品のジグソーパズルに取り組んでいるそう。「グラデーションが素晴らしいからパズル的に不利」と仰っていましたが、「嵐にしやがれ」でもその塗り重ねた色について言及されていましたね。特に少女の肌の色は近くで見てとても引き込まれてしまいました。
奈良さんのインタビューでこの絵は安心や心の豊かさを意図して描かれたと読んだ気がするのですが、絵を見つめているとその寄り添うような空気が自分の中に入り込んできて思わず泣きそうになりました。いまだにこの感情を上手く説明出来ないのですが、これが安堵ということなのでしょうか。奈良さんの作品はいつも、自分の中に上手くしまいこんでいると思っていた弱い部分を優しく引き出してくれます。
総括
買ったばかりのホワイトファルコンにサインもらったり、ラミネートは"奈良さん的"じゃないから消えてしまっても「(いつか)もう一回書いてくれますか」ってお願いした佐々木さん、ただのファンで最高です。
好きなものを好きなように語る「パねえ」も言ってみれば佐々木さんの小宇宙なのであって、それを覗かせてもらってる我々は本当に恵まれているなあと思います。
STARS展については「美術展に興味が無い人もスーパー楽しい」と言っていましたがまさにその通りだと思います。訪れる動機なんて「佐々木さんがパねえで扱っていたから」でも「嵐にしやがれで大野くんが訪れていたから」でも何でも良くて、とにかく行ってみて欲しいという気持ちです。
筆者は奈良さんが好きで、パねえの主題だったこともあり奈良さんを主に取り上げましたが、他の方の作品も皆さんそれぞれの視点で是非ご覧ください。
今回のパねえの名言は「国語の教科書は日本文学のベストアルバム」。久々に便覧とか読みたくなっちゃった。
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