鯉の滝登り

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米津玄師 - Lemon

3/14、米津玄師がシングル「Lemon」をリリースした。既に配信リリースはされているが、ホワイトデーの本日、やっとCDになった。

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〈3形態リリース。写真は映像盤〉

 

米津玄師の音源をCDで買いたいと胸を張って言えるのは、もちろん好きなアーティストの作品に対する所有欲もあるのだけれど、アートワークや円盤、歌詞カードのデザインの美しさによる部分が大きい。毎回ワクワクする仕掛けがあって、音源としてだけではなく家に飾りたいと思える点が魅力の1つであろう。そして購入者の特権でもある。

 

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タワーレコード渋谷店〉

 

シングルで言えば前作ピースサインから約9か月ぶりのリリースとなるが、その間にアルバムBOOTLEGという名盤が世に放たれている。もうすぐ出荷30万枚とかなんとか。これに関してはとにかく買ってほしい。ちなみに4枚すべてのアルバムを揃えようと思っている方は、BOOTLEGから1枚目の「diorama」まで遡って聴くのが個人的にオススメです。

 

 

話を戻す。表題曲"Lemon"は今年の1/12から放送開始され、今週末最終回を迎えるTBS系列テレビドラマ「アンナチュラル」の主題歌となっている。米津さん自身テレビドラマへの楽曲提供は今回が初となったが、ドラマの制作陣に愛された使われ方をしていたのが1ファンとしては非常にぐっときた。

実際購入に訪れた際も他のCDを購入していた女性2人組がコーナーの前で立ち止まり、「わー!Lemonだ」「アンナチュラルやばいよね」「曲自体もかかるタイミングも良すぎる」などと会話していたのを盗み聞きし、どういうわけか筆者が誇らしげにほくそ笑んでいた次第である。

 

 

さて、収録曲について。

表題曲の"Lemon"は、先述の通りテレビドラマ「アンナチュラル」の主題歌として書き下ろされた楽曲。人間誰しもが辿り着く「死」と向き合い、死者に向けて束ねられたレクイエムのような作品。

"amen"のようなサウンドに合わせてもまったく違和感のない「死」という重厚なテーマをポップミュージックに乗せ、どこか美しいもののようにすら捉えられるところが米津曲らしいし、ドラマの登場人物とも同じ方向をむいている。

作曲期間中に御祖父様が亡くなられたとのこと。オーダーにそって頭を捻っていたところその「死」が彼自身に現実として降りかかった上で作られたということを考えると、レモンのように酸っぱく、苦く、かつ爽やかな、不思議な感覚が自分の中を流れていく。

どこか遠いことのようであっても生きている間は常に隣り合わせである「死」というものを、忌み避けるのではなく慈しむ心も必要かもしれない。

 

 

カップリングは"クランベリーとパンケーキ""Paper Flower"の2曲。前者は「YANKEE」期のサウンドと洗練された気だるさが絡み合った、色気のあるレトロな楽曲。ビルボードで聴きたい。

後者はお得意の陰鬱自虐曲。でもこの音色、個人的には「BOOTLEG」を思わせる。どこか飄々としていて、現状を客観視している彼自身が投影されているかのようだ。

方向が全然違う楽曲たちでお腹いっぱいだ。米津シングルらしい組み合わせで構成されている。

 

 

そして1形態だけ贔屓させていただくと、映像盤は是非購入してほしい。なんと言っても米津玄師初の映像作品なのである。1/10に行われたツアー「fogbound」のファイナルである武道館公演の模様が収録されている。

この公演は筆者も訪れたが、改めて自分の音楽概念を大きく揺るがされたライブだったと思う。

収録曲が絞られているのは武道館公演の記事にも書いた通り歌詞飛ばしたりいろいろあったからだと思っているけれど、そもそも米津玄師はまだそんなにライブもツアーもやっていない。しかも以前は1ツアーの公演数が1桁のときもあったので、場数という意味では多いとは言えない。そんな中でも映像作品を出してくれるだけで嬉しい限りだ。改めてアクトを観て鳥肌が立ちっぱなしだった。

場数を踏んでいないとはいえ、歌の安定感は相変わらずだ。ライブにまだ足を運んだことがない人も是非観てほしい。あの日だけのスペシャルコラボもしっかり収められている。

 

 

若者だけではなく幅広い世代を魅了する27歳。「BOOTLEG」のディスクレビューで同じことを言っているライターさんがいた気がするけど、米津さんの勝負するフィールドに良くも悪くも敵がまったくいない。一人勝ち状態である。それどころかどんどん後続を引き離しているのが目に見えてわかる。今回のシングルだってその大きな一歩だ。

以前米津さん自身が「男性ソロアーティストと言えば米津玄師と言われるようになりたい」と欲もチラつかせていたけど、そう遠くない未来にその世論が見える気がする。

 

彼が音楽史を塗り替えていく、その瞬間に生きていることが何よりも嬉しい。

 

 

 

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