鯉の滝登り

好きなものを、好きなように、好きなだけ。

Fabula Fibula

※この記事はBIGMAMAのアルバム「Fabula Fibula」のネタバレを含みます。購入してからか、購入しないと決めてからお読みください。いつもありがとうございます。

 

 

 

私事ではあるが、最近TRICERATOPSのFCに入会した。UNISON SQUARE GARDENに続いて2つ目である。トライセラのライブはワンマン・アコースティック・フェス・イベント・わだしょソロ含めても行ったのは15回くらいだけど、先月のDINOSAUR ROCK'N ROLL7 (http://xxkanakoxx.hatenablog.com/entry/dinosaurrocknroll7)でいとも簡単に陥落した。

 

過去にFCに入っていたアーティストはポルノグラフィティが8年間、Mr.Childrenが3年間。同じくらい好きなアーティストは他にもいるが、私の中でFCに入る際の明確な基準が2つある。

1.ライブで底知れぬ感動体験をした

2.FCに入るメリットがある

当たり前のようにこれだけである。ポルノはチケットをlove up!で取らなくてもいいなと思うようになった(遠くからでも楽しめるとわかった)し、ミスチルに関してはF&Mですら取れなくなってしまったため継続しなかった。アーティストへの愛は変わらない。

 

 

近況はこのくらいにして。

 

 

3/22、BIGMAMA7枚目のアルバム、ファフファフィ...失礼、ファファファファ...あれ、「Fabula Fibula」がリリースされた。茶番ですみません。

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読み方はファビュラ・フィビュラ」らしい。普通に「Populas Populas」と同じ発音だと疑わなかったのに。詳しくはR&R Band Wagonの3月中旬回にて。

 

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ポスターも。

 

発売から1週間が過ぎてしまったため大きいポップはなかった。まさに金井が恐れていた現象そのもの。後述。

 

もう今のメンバーになって10周年なのね。深澤・横田がいた時代を知っている人はどのくらいいるのかな。それほど今のBIGMAMAが音楽シーンに与えている影響が大きいということでもある。

 

 

BIGMAMAが発明をする」というコンセプトのもと、「世界で、日本で、BIGMAMAにしかできないことをやろうという意志が一番高まったときにできた作品」とのこと。アルバムタイトルも発明品のひとつだって。ふぁふぁふぁ...

 

 BIGMAMAは1枚のアルバムに現実逃避を求めている。音楽に没頭し、それを突き詰める。

確かに彼らの作品は今作に限らず引き込む力がすごい。ブレない世界観が金井やメンバーに内在している証拠だと思う。

 

 

「Fabula Fibula」に関するあらゆるインタビューのうち、印象に残っているのは「長く愛されるものにしたい」という発言。

 

「CDショップで自分たちのCDがお店に並ぶ。ポップが大きく出る。とてもありがたい。だが1週間、2週間、1ヶ月すると新作がどんどん出てくる。みんなが次々と作っているから当たり前ではある。でも愛を込めて作り上げた作品がそうして押しやられていくのが悔しいし悲しい。どうやったら長く楽しんで、遊んで、好きでいてもらえるんだろうというのを自分たちなりに形にしようと思って作った」

 

うわーーーめっちゃ好き。

まず構想がCDベースなのが好き。感謝。

今回忙しくて取りに行くのが結構遅くなってしまったから、タワレコに行くのがよりつらかった。当たり前のことだけどそうだよなあって。

 

やっぱり生き残るには何よりもオリジナリティだと思う。誰かの真似じゃない君だけのスタイルで。

 

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 一通り聴いての感想は、このバンドは本当に彼らの作り上げた世界へ楽曲で引き込むのが上手いなということ。1曲、1枚、そして総合的な歴史として見ても各々が意志を持っていて、存在証明をされているうちに聴いている側もそちらの空間にすっぽりはまっている。都合がつかなくて断念したようだが、UNISON SQUARE GARDENの自主企画「fun time HOLIDAY6」でも観たかったなあというのが正直な感想だ。

あと金井・柿沼のKKコンビ、声がどんどん似てきている。柿沼が寄っていってる印象。1フレーズくらい歌えばわかるけど、1音じゃおそらく識別できない。

 

 

CDについてだが、ラジオで金井が度々述べていた「曲ごとに街を作った」というのは1曲1曲にコンセプトがあることの例えだと思っていたのだが違った。彼らは本当に街を作った。

 

権利的に載せていいのか微妙なので気になる方は買ってみてくださいとしか言えないが、曲という少し抽象的なものを街という形で具現化している。左に街の絵と概要、右に歌詞。恐ろしいなこのバンド。才能がこわい。

 

 

曲の数だけ都市があり、

曲の数だけ法律があり、

曲の数だけ物語がある。

  

 

ここまで明確に形成された世界観はものすごくドキドキする。本当に法律とか作っちゃってるもん。

 

 

さて全14曲、気が向く方はわたしの感想をどうぞ。【】は街の名前。

 

 

 

1.ファビュラ・フィビュラ

【裏切りの都市"ファビュラ"】

一言でいうと荘厳。わたしはこの曲が1曲目じゃなかったら購入を決めてなかったかもしれない。

多くのCDをタワレコで試聴する。最初の3曲でピンと来なかったらどんなに好きなアーティストでも、まずその日は購入しない。このアルバムも正直購入しようかダウンロードで済ませようか悩んでいたのだが、3曲目まで行かずとも即決だった

媚を売りにいきがちな1曲目で絶望の淵に立たせる。ゾクゾクする。これで爽やかポップ曲が最初に流れてきたらわたしはこのアルバムにお金を出してないと思う。

《信じるものはすくわれるかって? 足元にご注意》のところ、「救われる」だと思って聴いてたら「足元」ってきた瞬間に鳥肌立った。全体的に歌詞の遊び心が効いている1曲。

 

 

2.MUTOPIA

【音楽の楽園"ミュートピア"】

あなたはアルバムに入るなら絶対2曲目でしょうと思っていたよ。"ファビュラ・フィビュラ"の余韻を拾い上げて「これぞBIGMAMAな世界へと誘うのはこの曲しかいないかもしれない。

なんて幸せなアップチューン。ライブでこの曲来ると問答無用でテンションが上がる。文字通りの楽園。

Put your hands up guys in the air
Put your hands up girls in the air
Drop your guns no more need here
Put your hands up all over the world

ここ絶対カラオケで必要以上にr巻いて「英語の発音上手い俺・私」演じる人おるでしょ。全然上手くないからね

金井の英語は帰国子女的にも聴きやすいと思う。わたしも英語そんなに上手くないから説得力ないけど、ネイティブの友達に聴かせたら褒めてたレベル。さすが中大。

めっちゃButterfly(BUMP OF CHICKEN, 2016)とリンクするけど、EDM×クラシックという新たな発明をしたのはBIGMAMAだ。誰も文句なんかつけらんないから

 

 

3.ヒーローインタビュー

【忘却の街"ロアロア"】

この曲はラジオで結構かけてもらっていて、メロディラインがめっちゃBIGMAMAだなあというのが一聴目の感想。これはぜひコンセプトから読んで欲しい。こういう考え方は本当に好きだし、美しいと思った。

《君の記憶の片隅に僕の居場所はありますか?いいえ隅でなく真ん中を空けておいてよ》

傲慢なように聴こえるけど顔を上げれば真剣な眼差し。わたしの記憶の真ん中に入りたがってくれる人はいるんだろうか。わたしは記憶の真ん中に誰かを入れることができるんだろうか。

個人的な感想としては《ヒーローインタビュー》の歌い方がめっちゃ遊んでそうな歌い方だなあって思った。偏見御免。

 

 

4.Make Up Your Mind

【時が止まってしまった集落"クロックル"】

おいこら、副題どこ行ったよ。

〜運命に着火する〜

絶妙にダサくて最高にかっこいいから結構好きだったのに。バージョン違うのかな。

シンガロングを耳にするだけでCDJ1617(http://xxkanakoxx.hatenablog.com/entry/2017/01/03/182007)のあの空間に戻れる。「ここに似合うと思うんだよね」という金井の言葉が忘れられない。ここ、という言葉が幕張メッセなのか、GALAXY STAGEなのか、それとも漠然と大勢の人が居る場所なのか、具体的に何を指していたのか今でもわからないけれど、金井が目を細めながら言うから似合うんだろうなという気がしてくる。

エスかノーか。するかしないか。友達のままか恋人か。夢で終わるか現実か。真面目に生きるかズルするか。

この渦に打つ終止符に救われる。いや、すくわれているのかな。

逃げても隠れても必ず次の明日へ どちらを選んでも間違いじゃないから

 

 

5.BLINKSTONEの真実を

【山奥にひっそりと佇む石像だらけの秘境"ブリンクストン"】

こういう楽曲はバイオリンがより映える。全部の楽器にかっこいいところがありすぎて震える。特に1番と2番の間にワンフレーズだけ入るギターがかっこよすぎる。ライブで5人がこの曲を最高にかっこよく弾くのを棒立ちで聴いていたい。

この曲に関しては都市でも街でも町でもなく「秘境」。ちょっと変わりダネな感じ。

行った人が帰ってこない、その場所には人の形をした石像ばかり...ここから「人が石にされちゃう怖い場所なのかも!」とは思いたくない。もう一返しあってほしいな。

本当に大切なものは目に見えないものばかり

 

 

6.Merry-Go-Round

眠らない街"インソムニアーク"】

インソムニアを模した造語なんだろうか。これも彼らの発明の一つか。

この曲を聴いてふと思ったが、彼らの曲は歌詞でも物語を作っている。だから「曲ごとに街を作る」という試みだって安っぽくならない。もう既に街は作られていたんだなあ。

イントロではメロディも担うバイオリンがAメロではリズム隊と同じラインになってるのが痺れる。万能か。

柿沼ソロかっこよすぎ。これ目の前で見れたらほんとインソムニアーク」に行っちゃうわ。

 

 

7.Weekend Magic

【運命の赤い糸が実際に見えてしまう街"アカイト"】

むずむずするほどの多幸感。一言目の歌詞とか金井だったら本当に言いそう(偏見)。こういう嬉しさを運んでくれる曲好きだなあ。歌詞とも街とも関係ないけど、楽曲自体に雨上がりのキラキラ感がある。

この街では実際に赤い糸が見えるけど、絡まったりして上手く行かなかったり人々は定めに反して自分の意思を貫いたりしちゃうらしい。でもこれ現実でもそうじゃない?

生活していて「この人と一緒になるべきなんだろうな」となんとなく察する。でも謎の自信から他を選ぶ。幸せになれる道が見えているにもかかわらず。それってとても愚かだし、赤い糸を無視する自分に酔ってるだけなんだよねきっと。そろそろ歳も歳だし、ちゃんと赤い糸を辿りましょう。

 

 

8.Heartbreak Holiday

【心に傷を負う人が集まる町"トラウーマ"】

失恋休暇とな。一昨年のわたしにこの町を教えてあげたい。この曲を聴かせてあげたい。絶対ボロ泣きする。これからも自分が傷ついたときには音楽を頼らずにはいられないだろうなと改めて思う。

歌詞はさほど多くないけど、楽曲が傷を包み込んでくれるあたたかさを持っているから何回聴いても晴れやかな気持ちになれる。

「都市」「街」「町」、使い分けているのは何か意図があるのかな。規模かな。

誰かが君を探しているのさ 見つけやすいように さあ

 

 

9.737 3rd Ave, RT 10017

インストゥルメンタル。この辺りで挟むのは何か意図があるのかな...と聴き進めていたら、あれ、雨音が。"Heartbreak〜"から次の曲に繋げるのは少し強引だし、良いスパイスなのでは。

インストって結構飛ばす人多いと思うけどちゃんと聴いて欲しい。すべての曲が意志を持ってそこにいる。

 

 

10.レインコートになれたなら

【誰かが涙を流す度に雨が降る街"レインティア"】

切ない空気を纏った金井の歌い出しから始まる印象的な1曲。《透けた傘》「易い嘘」って読ませるアーティストをわたしは他に知らない。結構無理矢理なのにこれが嫌じゃないんだよなあ。不思議。

"737 3rd Ave, RT 10017"のように直接的な雨の音はないのに、雨の景色が自然と見えてくるし1音1音が雨音に聴こえてくる。

この街の人は虹を知らないらしい。「♪淡路島に虹が出た〜」みたいな虹、見せてあげたいな。

 

 

11.ALL RIGHT

【人情の港町"ワッカ"】

声にエフェクトがかかっている感じというか、そもそもサウンドにどこか懐かしさを感じる。ちなみにわたしの父のおすすめはこの曲

歌詞が結構あらあら金井やってんなという感じだけど、それ以上に応援歌の要素が強くて許せる。

普通に下ネタやんけ。ってクスクスしてたらギターリフきっかけで拍子が変わる。やられた。遊び心満載。後半のカッティングめっちゃかっこいいやん。

 

 

12.SPOON DIVING

【空飛ぶ庭園"ブロークン バーキン"】

メロディがめっちゃポルノグラフィティ。いやパクりとかじゃなくて、岡野昭仁が歌っているのが想像できるメロディライン。これでもう少し口数が多くて2番の歌詞2回歌っちゃったりしたらもう完全に岡野昭仁。特に《綺麗事ならべて行こう》のとこ。伝われ。

キメがいちいちかっこいい。

39秒という数字には何か仕掛けがあるのかしら。意味なくてもいいなと思ってしまって特に調べたりはしていない。

 

 

13.SPECIALS(FFver)

【絆創の都"スマイルワン"】

この曲は結構思い入れがある。

昨年UNISON SQUARE GARDENを呼んだ企画が"You Are The SPECIALS"だった。あの日もやっていたけど、歌詞を聴いて色々考えた。BIGMAMAにとってUNISON SQUARE GARDENはSPECIALSのひとつなんだなあ。メンバー単位でも、バンドでも。

わたしにとっての"SPECIALS"って誰だろう。

最高の共犯者。お洒落。

 

 

14.愛はハリネズミのように

【幻覚の島"ドープランド"】

エンドロールには早すぎず遅すぎず。

金井政人という人間を考えた。

彼は某テナーのボーカルがよく食べ物をSNSにアップする時に用いる「〇〇という概念」という表現を多用したり、さりげなく「死ねない理由」とか言ってみたり、お洒落な言葉を恥ずかしげもなく並べたり。しかしそれでいて音楽の方向性や芯はこわいほどブレない。媚びているようで媚びてない。家族への愛情を痛いほど感じる日もあった。思わず愛してしまう存在。

この曲を聴いていてなんだかそんなことを考えた。穏やかなエンドロール。

 

 

 

以上です。

このアルバムのある曲・あるフレーズをきっかけにわたしはあることを決断した。ずっと悩んでいたのに金井の一言でそのドアが開かれた。鍵なんてもともとなかったのかな。開けようとしないから知らなかっただけ、かも。

これが達成できたら間違いなく「Fabula Fibula」のおかげだなあ。

 

 

 

ここまでアルバムをベタ褒めしてきたが、実はBIGMAMAのスタンディングライブが苦手だ。不快な気持ちになったらそれは申し訳ない。

 

先ほども話題にしたが、昨年6/2.3に行われたUNISON SQUARE GARDENとのツーマンライブ、「You Are The SPECIALSに足を運んだ。まあ荒れ様がすごい。ダイバーが多いのはわかっていたけど、開演前からサークルを作り、メンバーが出てきても演奏が始まってもステージに背を向けたままの人が多すぎて引いた。いやいや、BIGMAMAの音楽ってBGMレベルじゃないでしょうよ

もちろんそんな人たちは少数だし純粋に音楽や彼らのアクトが好きな人はたくさんいるということはわかっている。それでも印象はよくない。そういうものなのだ。

 

だからこそ武道館が嬉しい。あの神聖な場所を彼らが痛切に大事に思っているのはよくわかる。10周年、今このタイミングを逃したら順番がまわってこないかもしれない...恵比寿での武道館公演発表はあっさりと行われたが、武道館という場所への心持ちは非常に強く、感慨深いものがある。やはり若いバンドがやすやすとワンマンをしていい場所ではない。がんばってきたとか知らないから。

 

10/15、避けていた彼らのワンマンを観に行ける。本当に嬉しい。自分だけの場所で、わたしと5人の1対1。めいっぱい彼らの音楽に酔いしれてこようと思う。

 

 

安井、飛ぶかなあ。

 

 

 

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