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鯉の滝登り

好きなものを、好きなように、好きなだけ。

Here's the Fools Who Dream

ミュージカル映画を観た」以上の感情がわきたっている。名前を付けるのは難しい。これ観て響かない人がいるのかと思うくらい昂ったが、感情を押しつけることは絶対にしてはならないと我に返って今に至る。

 

また素晴らしい映画に出会った。

 

 

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大注目の映画『LA LA LANDが先日ようやく日本で公開された。

第73回ヴェネツィア国際映画祭オープニング作品であり、全米での興行収入は先月末時点で1億ドルを突破している。ゴールデングローブ賞では7部門でノミネートされそのまますべて受賞。本日2/27に行われたアカデミー賞では13部門で14ノミネートされ、監督賞や主演女優賞など6部門での受賞を果たした(ムーンライトと間違えられた件はさておき)。

早速観て参った。

 

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上映されている映画館が限られているため、今回は新宿バルト9へ。

 

[あらすじ]

 

 

 

↓ここからネタバレを含みますので、観てから読むか見ても平気な方だけスクロールしてください

 

 

 

 

 

*監督の話

本作の監督を務めたのは2014年の映画『セッション(原題:whiplash)をヒットさせたデイミアン・チャゼルだ。若干31歳にしてその才能を次々と見せつけている。ハーバード大学を卒業しているというから恐れ入った。しかもこの物語の構想は大学時代からあったようで、脚本も2010年頃からあった模様。まだ実績のなかったチャゼル監督は、いろいろな会社から「このキャストなら撮る」「ジャズじゃなくてロックミュージシャンにしたら」「有名な曲で構成しよう」など様々な条件を突きつけられ、それをすべて断った。『セッション』でバズり、その才能が認められたからこそ監督の要望が叶えられ、この映画がある。

 

 

*主演2人の話

今作の主役はセバスチャン役のライアン・ゴズリングとミア役のエマ・ストーンだが、実は当初マイルズ・テラー(『セッション』に出ている)とエマ・ワトソンがキャスティングされていたらしい。エマ・ワトソンは『美女と野獣』が先に決定していたためにこの話を断ったのだが、一方でゴズリングはこちらの映画が決まっていたために『美女と野獣』を断ったというのだから皮肉なものだ。4人とも演技がとても好きなのだが、個人的にセバスチャンとミアに命を吹き込むのは完成版のキャストでこそ成し得たと思う。

ストーンとゴズリングはこれで3度目の共演。ダンスも演技も息がぴったりで安心して観ていられる。どちらも芯の強さが光って素敵だ。2人とも相変わらず可愛いしかっこいいしで好きすぎる。

 

 

*タイトルの話

La・La・Land」という単語は1970年代後半から使われ始めたスラング寄りの俗語だが、主に2つの意味があると言われる。

 1.恍惚で、心ここにあらず陶酔した状態。
 2.ロサンゼルス周辺のことを差す言葉。

「La」=「LA」=「Los Angels」

ハリウッドやビバリーヒルズなど浮ついたイメージのある地名から連想されてこう呼ばれるようになった。
夢の国で愚かなほど真っ直ぐに夢を追う2人の姿と重なって、的確なタイトルだなあと感じた。

 

 

*撮り方の話

マーティン・スコセッシのボクシング映画『レイジング・ブル』でボクシングのリングの中にカメラを置いたように、ダンスしている群集の中にカメラを置きたかったと語るチャゼル監督。カットを入れない長回しで、躍動感を余すことなく映し出した。

また、本作は35ミリフィルムでの撮影にこだわった。冒頭に映画のスクリーンが横に広がり「CINEMASCOPE」のロゴが映し出される。ぞくぞくした。現代へミュージカル映画の熱量を復活させたいというチャゼル監督の意志だ。

 

 

*オマージュの話

ジェームズ・ディーン主演の『理由なき反抗』をはじめとした数多くの映画のロケ地となった「グリフィス天文台」や、映画『カサブランカ』で使われた窓のセットが組まれているワーナー・ブラザース・スタジオなど、撮影場所は見覚えのある場所ばかりだ。

 

そして各シーンにも過去の名作のオマージュが散りばめられている。

セブとミアが満点の星空の下タップダンスを踊るロマンチックなシーンは、『踊るニューヨーク』(1940)のフレッド・アステアとエレノア・パウエルが星の降るステージでタップダンスを踊るシーンと重なる。

またセブが街灯に登って優雅に踊るのはおなじみ、『雨に唄えば』(1952)でジーン・ケリーが土砂降りの雨の中街灯に登るのを再現している。路上で踊り出したり、女性のドレスが単色だったりという点もこちらの映画からかなと思う。
そしておそらくフランスのミュージカル映画シェルブールの雨傘』(1964)を最も多くなぞっていると感じた。2つの作品に共通する点は多いのだが、『シェルブールの雨傘』の象徴的なエンディングは本作最高のシーン、エピローグと重なる。

 

 

*小ネタの話

要所要所に皮肉が散りばめられていて1人で笑ってしまった。

ミアのカフェにグルテンフリーでないことを理由に返金を要求する客が現れるが、これはハリウッド発祥の「グルテンフリーダイエット」を思わせる。

また日本人としては嬉しいことだが、ミアの車含め止まっていた車がSUZUKIのプリウスだらけだったのはハリウッドセレブの間で大流行したことへの揶揄か。

さらにミアとのデートでセブが間違って一方通行の道に入ってしまいバックで戻る事態があったが、これはロサンゼルスの道路区画がわかりづらく急に一方通行になる道もあるということを知っていればさらに笑えるシーンだ。

また、小ネタと言うには監督に失礼だが、最初の大渋滞のシーンについてである。ロサンゼルスは渋滞で有名なのでその揶揄とも取れるが、もうひとつ意味が隠されていると個人的には思った。「ミアの夢」である。

物語冒頭ではミアはオーディションに落ち続けており、女優への道は思ったように進まない。しかし5年後結婚し、子供も生まれ、女優としても軌道に乗った彼女は、渋滞に巻き込まれても横の道からスイスイ行くことができた。成功の象徴とも言える。

チャゼル監督はこういった示唆を非常に得意とする監督である。なんか切なくもなるけれど。

 

 

*デートの話

映画館で恋人と恋愛モノじゃない映画を観に行って徐々に手絡めるやつやりたーい!プラネタリウムでちゅーしたーい!以上です。

 

 

秒速5センチメートルの話

 昨年『君の名は。で一気にその名を轟かせた新海誠監督の作品『秒速5センチメートル』と重なる部分があるなと思った。『秒速〜では幼馴染みの貴樹と明里が中学生の時に離れ離れとなる。貴樹はずっと明里のことだけを想い続けていたが、明里は次の幸せを見つけていた。

最後の場面で偶然二人が出会い、女側は思い出しつつも今の幸せがあり、それを見てはじめて男側が諦めるところで共通するところがあると感じた。

人によりけりを前提としても男性の方が一途なのかもしれないなあ。わたしはそうは思わないけれど。

 

 

John Legendの話

John Legendが出ていたことを知らずに観たのでびっくりしたよという話。彼はグラミー賞をとったこともある正真正銘のアーティストゆえ、この音楽溢れる映画に彩りを添えたのは間違いない。

 

 

*制作秘話

 ゴズリングはピアニスト役なのだが、実は代役を使っていない。初心者であったにも関わらず、3ヶ月の猛特訓の末にプロが嫉妬するほどの腕前になった。劇中で使用されている音源もすべてゴズリングが弾いたものだというから驚く。自分もかれこれ20年ほどピアノをやっているが、本当に上手いと思った。

またセブとミアが踊るシーンが沢山あるが、彼らは時間が限られている中自主的に時間もたくさん設け練習を重ねた。監督もインタビューにおいて「彼らは自分のすべきことをきちんと理解していた」などと高く評価している。キャストの努力による素晴らしさもあったということだ。

主人公の2人はそれぞれ50回も衣装チェンジをしたというから驚きだ。時に40度を超える日もあったが、汗をかくたびに衣装を変え颯爽と撮影に臨んだという。本当にすごい。

 

 

*夢と大切な人の話

これは本当に難しいトピックだし、何が正解ということはないのかもしれない。わたしはまだ考え方がおこちゃまなのでセバスチャンにはパリについて行ってほしかったし、2人が結ばれるハッピーエンドを望んでいた。いやこれもハッピーエンドといえるのかもしれないけれど。

女優になれるきっかけをくれたセバスチャンのことをわたしがミアなら大切にしなきゃと思ってしまうが、現実はそうではないらしい。劇中では2人ともアメリカンドリームとも言える壮大な夢を叶えたわけだが、プライベートが充実しているのはミアだけ。セブのバーからミアが去る際に振り返ってセブと目を合わせ互いに微笑むシーン...うーん切ない。名シーンだ。

家族や友人、恋人から影響・助けを受けて今の自分がある。夢を突き詰めるためにすべてを置いてパリへ行くような勇気はわたしにはない。そこの裁量ってすごく難しい。

エンドロールを眺めながら色々と考えてしまった。

 

 

 

本当に素敵な映画だった。

まだ観ていないという方はぜひ劇場へ。